寒地型牧草の自然下種に関する研究 : IV.自然下種によるオーチャードグラス-レッドトップ放牧地の植生改善の実証
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概要
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牧草密度の低下したオーチャードグラス-レッドトップ放牧地に自然下種法を適用し,その有効性について検討した。供試草地は,1967年に耕起造成した混播草地7.2haで,この草地内に(1)春から7月末まで利用せず,充分に下種させた後,8月上旬に立毛草を刈払い・搬出し,9月上旬および10月下旬に放牧するR1区12.5a,(2)8月まではR1区と同じ処理であるが,9月に放牧せず10月に放牧するR2区12.5a,(3)慣行的な輪換放牧利用をする対照区25aの3試験区を設けた。自然下種処理は1984年に行い,翌年にはいずれの区も同じ時期に放牧した。結果の概要は,以下のとおりである。1.R1区のm^2当たり種子生産量は91.1g,8月上旬までの下種量は59.3gであった。2.下種した種子の発芽が始まる8月,9月の土壌水分は,R1,R2区>対照区であった。同時期の土壌硬度は,対照区>R1,R2区であった。3.1984年5月(試験開始時)のオーチャードグラスの既存個体は,m^2当たりR1区4.9,R2区5.0,対照区3.3であったが,同年10月には,それぞれ1.3,1.6,2.3に減少し,長期間休牧したR1およびR2区で枯死が顕著であった。4.自然下種処理により,R1区ではオーチャードグラスの被度が著しく高くなり,雑草の被度が低下し,植生が改善された。R2区と対照区ではメヒシバの被度が高く,それが牧草を抑圧して,植生が悪化した。5.自然下種処理をした翌年1985年の10a当たり乾物収量は,R1区1,430kg,R2区1,188kg,対照区1,073kgで,それぞれ前年の収量に比べて32%増,5%増,25%減であった。6.以上,自然下種法は,草生の改良に有効であり,その理由については,下種量が多いこと,下種した種子の発芽・定着環境(土壌水分,土壌硬度,既存牧草との競合など)が良好であったことが考えられる。
- 日本草地学会の論文
- 1986-10-31
著者
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