牧草の定着に関する研究 : I.不耕起追播牧草の定着に及ぼす地温の影響
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概要
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寒地型牧草と暖地型牧草の連続不耕起栽培における追播牧草の定着に及ぼす地温の影響を前植生と追播牧草との生育競合の面から解析するため,地温を変えた土耕ポット試験を行った。さらに追播時期を変えた圃場試験により,追播牧草の定着が最良となる適地温域を明らかにした。1.地温を18〜33℃の4段階に変えてイタリアンライグラス(Ir)草地にバヒヤグラス(Ba)を追播した場合,Baの生育は28℃以上の高地温域で旺盛となり,良好な定着を示した。しかし23℃以下の低地温域では旺盛な残存生育をするIrとの光や養分に対する競合の結果,Baの定着は不良となった。一方,地温を15〜30℃の4段階に変えてBa草地にIrを追播した場合,15〜25℃の地温域でのIrの生育は極めて旺盛となり,定着も良好であった。2.18,23,28,33℃の各地温域で生育させたBaとIrの根のTTC還元力と呼吸能は,Baでは28℃以上の高地温域で,Irでは18〜23℃の低地温域で高い値を示した。このように地温はBaとIrの根の活性に著しく影響することから,地温は前植生と追播牧草との生育競合に養分吸収の面からも大きく影響するものと考えられた。3.Ir草地にBa,ローズグラス(Ro),ダリスグラス(Da)を時期を変えて追播した場合Ba,Da. Roの定着は地温25℃以上となる追播期で最良となった。また,Ba,Daと比較して初期生育が速く,根の活力の大きいRoの定着が良好であった。しかし,Ro,Ba,Daの定着向上を図るためには,前植生Irとの生育競合をさらに軽減させる方策が必要と考えられた。他方,暖地型牧草地にIrを追播する場合,Irは地温20℃以下となる追播期で最良となり不耕起でも比較的容易に定着するものと考えられた。
- 1980-04-30