簡易セルラーゼ法における酵素濃度と消化時間がソルガム新鮮葉の消化率におよぼす影響
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概要
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ソルガムの新鮮葉を直接セルラーゼ溶液に浸漬し消化させる場合における新鮮葉の消化率におよぼす酵素濃度と分解時間の影響を検討した。供試材料は前報と同様の4品種,Bloom(B)とbloomless(bl)およびNormal-18(N-18)とbrown midrib-18(bmr-18)である。4葉期と止葉期に最上位展開葉を採取し,4葉期では全葉を100ml三角フラスコ当り各8枚(生重約0.6g),また止葉期では中央部5cm長の葉片を同フラスコ当り各3枚(生重約0.6g)を分解用として供試した。セルラーゼ(セルラーゼオノズカP 1500)を4葉期には0.25%,0.5%,1.0%の,また止葉期には0.5%,1.0%,2.O%の各3段階に酢酸緩衝液(pH 4.0)で溶解し,上記フラスコに各100ml加えたのち,40℃に保った振とう培養器中で消化させ,消化時間は3,6,12,24および48時間の5段階にした。消化率は消化前後の乾物重量を求めて算出した。また止葉期では上記と同位葉を乾燥粉砕し,2ステップセルラーゼ法で乾物消化率を求め前者の結果との比較とした。結果の要約は下記のとおりである。1.酵素濃度の増加に伴ない,止葉期では4葉期に比べて緩慢であったが,新鮮葉の消化率は増加する。また止葉期の2%濃度でBとN-18の消化率で逆転がみられた以外ではb1>bmr-18>B>N-18の品種の消化率に対する順位は変らず,また品種間差は高濃度条件下で大きかった(Fig.1)。上記の結果から,4葉・止葉のいずれの生育期でも新鮮葉の消化率で品種間比較をする場合には1%セルラーゼ溶液が好適すると考えられた。2.4葉期の葉では24時間以後でも消化が著しく,一方止葉期の葉では12時間以後の消化が緩慢であるという差異はあったが,いずれの生育期でも,新鮮葉の消化率は消化時間の延長に伴ない増加し,またb1>bmr-18>B>N-18の消化率順位は24時間以後では不変となり,品種間比較も容易であった(Fig.2,3)。この結果から,新鮮葉の消化時間は24〜48時間が好適すると考えられた。3.分解率と消化時間の関係を対数グラフで表わしたFig.4の結果から,新鮮葉の分解が0〜12時間の急速な分解(前期)と12〜48時間の緩かな分解(後期)に2分されることが明らかになった。乾燥粉砕サンプルの分解に比べて時間的に緩慢であったが,新鮮葉でも乾燥粉砕サンプルと類似したセルラーゼによる分解反応を示すと推察された。4.乾燥粉砕サンプルの2ステップセルラーゼ法による消化率はb1>bmr-18>B>N-18の順位であり,新鮮葉の簡易セルラーゼ法による消化率との相関が高かった。しかし,簡易セルラーゼ法では酵素濃度が高まるほど品種間差が大きくなる一方,2ステップセルラーゼ法との相関性が低くなる傾向があった(Fig.5)。この結果は簡易セルラーゼ法における処理条件の重要性を示唆している。5.以上の結果から,(1)新鮮葉は乾燥粉砕サンプルに比べて消化率は低く,消化に時間を要するが,両材料のセルラーゼによる分解反応は類似していると考えられ,また(2)新鮮葉を1ステージ法で消化させる簡易セルラーぜ法でも,適切な濃度および消化時間を用いれば,簡易法による消化率によって品種間比較が可能であると考えられる。またソルガム新鮮葉の場合,1%セルラーゼ溶液で24〜48時間消化させることが提案される。
- 日本草地学会の論文
- 1979-01-31
著者
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