耕地防風林の作物生育及び收量に及ぼす影響について : I.微気象の観測
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本報告は昭和29年7,8月,冷害をひき起こすような異常気象のもとに於いて,晴天,雨天,曇天の3日間に渉つて観測した結果である。実験を行った場所は帯広畜産大学農場内の落葉松防風林をはさんで裸地(A区)と防風林にて囲まれた燕麦畑の中の4箇所(B,C,D及びE区)とで,地表より2mの高さまでの気温,湿度及び地温を測つた(Fig.1参照)。その結果を要約すれば次の如くである。1.晴天日(VIII,3,1954)の観測結果。気温はA区では日中は地面附近,B区では草間部(1m)が何れも最も高く,C,D及びE区の3区は早朝及び日没後は草間部より下方が,日中はそれより上方が高温である。1日の平均気温はA区は地面附近,B,C,D,Eの各区は何れも草間部が最高で日較差の最大の時刻が一致している。地温は朝は防風林から離れるに従つて高温で,日中は逆になつて低温,夜になると再び防風林から離れるに従つて高温となる。日較差,平均地温は防風林に近いほど高く,夜には著しく防風林の効果を現わし,防風林から離れるほど著しく高温となる。湿度はA区は地面附近,B,C両区は早朝に草間部,D,E両区は草上部が最も多湿で,日中,日没後にはB,C,D,Eの各区は一様に地面附近が多湿である。平均湿度は各区ともに地面附近が多湿で,高さを増すに従つて次第に少湿となる。C,D,E区に於いては平均湿度の多い所と湿度日較差の最小部との時刻が一致している。A区とB,C,D及びEの各区との湿度の相異の最もよく現われるのは9時から12時の間である。2.雨天日(VII,28,1954)の観測結果。気温は時刻と場所とを問わず,地面附近が高温で,高さを増すに従つて低温となり,平均気温も場所を問わず地面附近が高温で高さを増すに従つて低温となり,晴天日と異なつて日較差の最小の所に一致する。各観測時の地温は防風林から離れるに従つて高温となり,平均地温も同様である。また最高起時はA区よりB,C,D及びE区の方がおそく現われる。湿度はA区では朝夕地面附近が多湿で,午後は草間部より上方が多湿である。B,C,D及びE区では朝には草間部より下方,日中は草間部より上方,夜間はB,C両区は草間部より下方,D,E両区は草間部より上方が最も多湿である。平均湿度はA区では地面附近で,B,C,D及びE区では草間部が多湿で,A,B及びCの3区は較差の最大とその時刻が一致し,D,E両区は較差の最小とその時刻が一致している。3.曇天日(VII,29,1954)の観測結果。気温はA区では地面附近が最も高温で,高さを増すに従つて低温となり,B,C,D及びE区では午前中は地面より高くなるほど低温となるが,午後には地面附近が最も高温で,草上部がこれに次いで高く,草間部が低温となる。夜には再び地面附近が高温で高さを増すほど低温となる。平均気温は各区とも地面附近が最も高温で,較差はB,C両区は平均気温の最高と較差の最大とが一致するが,他区では較差の最小と一致する。地温は午前は防風林から離れるに従つて低温であるが,午後には高温となる。平均地温の較差は防風林との距離の間に一定の傾向が認められない。湿度はA区では朝と日没後は地面附近が多湿で,午後は草間部が多湿である。B,C,D及びE区は朝と日没後は草間部が多湿で,昼間は地面附近が多湿,草間部と地面附近の高低の交換は防風林に近いほど早い時刻に行われる。平均湿度はA区では地面附近,B,C,D及びE区では草間部が多湿で,較差はA区では最小に一致するが,B,C,D及びE区では最大にも最小にも一致せず。その中間の値に一致することが認められる。また湿度は気温,風,その他の条件の影響を受けるため防風林からの距離による差異は定常的に認めにくい。
- 1955-03-30
著者
関連論文
- 41. 大豆増収機構の栽培的解析 : 栽植密度について(第7回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 耕地防風林の作物生育及び收量に及ぼす影響について : I.微気象の観測
- 20. 中札内の農作物収量差について(第8回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 16. 昭和32年の気象概況(第8回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 51. 昭和29年の異常気象とこれが農作物に及ぼした影響 : 第6報 水稻のヤロビゼーション(第5回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 50. 昭和29年の異常気象とこれが農作物に及ぼした影響 : 第5報 大麦,燕麦のヤロビゼーション(第5回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 49. 昭和29年の異常気象とこれが農作物に及ぼした影響 : 第4報 馬鈴薯の生育(第5回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 48. 昭和29年の異常気象とこれが農作物に及ぼした影響 : 第3報 越冬大麦の生育(第5回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 24. 昭和29年の異常気象とこれが農作物に及ぼした影響 : 第2報 防風林の微気象(第5回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 23. 昭和29年の異常気象とこれが農作物に及ぼした影響 : 第1報 異常気像の2,3(第5回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 19. 燕麦圃におけるMCP及び2・4-Dの除草効果(第8回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 18. 品種及び播種期を異にした秋播小麦の収量について(第8回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 17. 尿素撤布効果がソバの生育並びに品質に及ぼす影響(第8回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 45. 日射量,日照時数が作物の生育に及ぼす影響について(第7回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 44. 昭和31年の気象概況(第7回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 43. 大樹地区酪農家の飼料生産竝びに飼養実態について(第7回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 42. 大豆萎黄線虫に関する研究(第1報) : 越冬環境を異にせる大豆萎黄線虫が大豆の生育並びに収量に及ぼす影響(第7回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 15. 昭和30年の気象概况(第6回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 14. 市街地と田舎との気温差(第6回帯広畜産大学学術集談会記事)
- 北海道十勝地方の作物型 (第100回講演会)
- 北海道十勝地方の作物型
- 6.十勝地方の作物型(第4回帯廣畜産大學學術集談會記事)
- 十勝地方の作物型