基礎計算および默読特別練習の効果
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概要
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一、加減乗除の基礎的練習を、一回三分間づつ五〇回行った結果、加算(三年生)では一五七%、減算(三年生)では二〇五%、掛算(四年生)では一二二%、割算(四年生)では一二八%、総平均一五〇%の増加を示した。すなわち基礎計算活動の作業量は二・五倍に増加し、作業速度の面から見れば二・五倍にスピード・アップされたのである。二、誤りの率も非常に減少し、加算では五三%、減算では一一八%、掛算では五七%、割算では一七%、平均して六一%減少した。三、默読の特別練習について見れば、五年生の実質的増加率は六六%、六年生のそれは一三四%となつて、読書の速さは一・六倍乃至二・三倍となつた。四、五〇回の練習結果は以上の如くであるが練習の経過を見ると五〇回はまだ途中であることがわかる。しかし他学科への転移の問題があり、学習指導の方針との関連の問題もあることであるから、教育上何回ぐらいが適切であるかは、今後なお検討しなければ決定できない。五、基礎計算特別練習が諸他の活動へどう影響したかについて見ると、算数計算問題の解答には一一・四%、写字検査に対しては一二・二%、連想の速度に対しては一三・九%、手指の運動に対しては八一%、平均して一一・四%の積極的な効果をもたらした。すなわち計算問題や写字や連想のような精神活動は勿論、手指の運動に至るまで、一様にスピード・アップされたのである。六、黙読練習の諸他の活動に対する影響を見ると、五年生では判然した影響を与えず、むしろ逆方向にあるように思われる。すなわち読書力に対してはマイナス七・七%、国語学力テストにはマイナス八・六%、算数応用問題テストにはマイナス一七・六%、連想速度には二・六%、平均してマイナス七・八%の影響を与えたのである。これに対して六年生では、国語学力テストのマイナス五%を除き、読書力に一九・四%、算数応用問題テストとに二八・二%、連想速度に七・三%の積極的影響を与え、全体を平均して一二・五%の良効果をもたらしている。七、農村児童の活動の敏速化。農村児童はよくスロモーといわれるが、たしかに第一回の練習実験においては、基礎計算活動は市児童に比べて、平均二七・五%だけ劣つていた。しかし練習実験の結果、加算・減算は取り戻せなかつたけれども、掛算・割算はむしろ市児童の作業量を凌駕し、総平均すれば一・四%まさつていたのである。かくて農村児査のスロモーも、この特別練習を行うことによって、取り戻す可能性が認められたわけである。このことは、前述した諸結果とともに、スロモーといわれている児童、あるいは環境的にスロモーに慣らされている児童のうちに、活動性を呼び起し、全面的な敏活性と流暢さとを固定させる可能性の潜んでいることを示唆する。八、低知能児童の練習効果と教有。各組から最低知能の児童五人と、最高知能の児童五人とを選び出して、比較検討した。それによると低知能児童の作業量は、全体の平均一〇〇%より一九%低いが、向上率は一六五%であつて、全体の平均一八二%から見ればやや劣るにしても、約二倍半のスピード・アップがあつたことがわかつた。しかし誤りの数を見ると、IQ八○〜八九の児童は八二%も減少しているが七四〜七〇の児童は練習によつて反つて、五〇%増加し、またIQ七〇未満のものは三〇〇%増加している。これによつて見れば、同じく出来ない児童でも、IQ八○以上は改善の見込が多く持たれるが、IQ七四以下の場合には困難が加重するであろうと推定される。次に低知能児童における黙読練習の結果について見れば、読書速度(二九行)は全体の平均(五二行)の五六%、読書力(九)は全体の平均一六・二)の五五%であるから著しく低いけれども、練習の効果は読書行数の増加となつて現われ、全体の増加率が一〇九%であるのに対して、一一三%の増加率を示している。また黙読練習の影響としての読書力の増進率も全体の平均が四五%に対して四八%である。もつともこの場合の低能者のIQは七六〜九六であつたから、基礎計算練習の組のように七四未満のものは一人もいなかつた。知能・学業の低位児童のなかには、ある基礎的学習活動をこうした方法によつて特別に練習させることによつて、低滞していた活動を刺戟して敏活にすることができる場合が少なくない。そしてその結果単にその特定の活動ばかりでなく、更に広く全般的活動の敏活化が将来され、知的活動および学科一般に対しても積極的な関心が払われ、努力がなされるようになるのである。九、六ヵ月後および一年後の残存効果。この特別の練習効果は時日の経過とともに多かれ少なかれ減退するが、加算および掛算の特別練習の効果は、六ヵ月経つても、それぞれ一九八%、および一七八%を保持し、一ヵ年後においては二一四%および一八三%となつて、反つて盛り返している。そして練習しなかつた対照組を、六カ月後においてそれぞれ六八%および五三%引き離し、一年後において七一%および四〇%引き離している。誤りの減少についても大体同様のことが言える。これらの事実を見れば、三分間五〇回という特別練習の効果が、単なる一時的なものでないこと、いわんや始めから放置されたものに比して遙かに効果ある方法であることは明らかである。一〇、以上の諸結果にもとずいて、基礎計算および獣読の特別練習を一回三分間、五〇回以上実施することは、学習上大きな効果があるものと結論することができる。そして、例えば三年の一学期に加算、二学期に減算、四年の一学期に掛算、二学期に割算を実施し、更に五年あるいは六年のときに黙読を実施するならば、その効果は期して待つべきものがあると思う。
- 1955-09-28
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