北海道十勝地域における火山灰土壌の土壌水分並びに化学的性質に関する比較研究
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概要
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十勝地域に分布する火山灰土壌のうち,乾性および湿性土壌亜型は,水分環境,断面形態並びに化学的性質に大きな相違がみられる。本研究では,2土壌亜型の畑地土壌につき1978年5月〜9月下旬のpF水分変動と,作土(0-10cm)の化学的性質の経時的変化について比較検討した。すなわち,芽室町新生(乾性亜型)および報国(湿性亜型)の2圃場につき,断面形態,一般理,化学的性質,腐植組成並びに粘土鉱物組成を明らかにした上で,深さ別テンションメーターによりpF水分変動を毎日観測した。月別の作土試料については,pH,EC(電気伝導度),アンモニア態,硝酸態窒素,リン酸および置換性カチオン含量の変化を測定した。pF水分の観測結果,乾性亜型の圃場は,7月末〜8月中旬に正常生育阻害水分点(pF 2.7)以上の乾燥状態で推移し,水分補給の必要性が認められた。他方,湿性亜型の圃場では,5月下旬〜6月上旬の降水でpF O.8〜1.8の圃場容水量以上の高い水分状態がみられたが,7月〜9月はpF1.8〜2.7のほぼ最適水分で経過した。月別作土試料の分析結果,乾性亜型の圃場(標準施肥区)は,湿性亜型圃場に比して,高pH(6.1〜6.4),低EC(77〜150μ〓/cm),低有効態リン酸(P_2O_50.7〜1.Omg/100g),並びに低置換性カチオン(Ca^<2+>160〜200mg,Mg^<2+>14〜18mg,K^+16〜34mg/100g)を示した。他方,湿性亜型の圃場は,低pH(4.9〜5.3)であるが,高EC(180〜599μ〓/cm),高有効態リン酸(P_2O_51.7〜3.9mg/100g),並びに高置換性カチオン(Ca^<2+>200〜260mg,Mg^<2+>14〜26mg,K^+20〜50mg/100g)で,作物養分供給能の高いことが推論された。なお,6月〜9月の作土中の無機態窒素の挙動は,2亜型圃場とも類似のパターンを示した。以上の調査は,1978年(異常高温寡雨)に実施されたが,この年のような気象状況の場合,湿性亜型の圃場(暗渠排水施工済)は,土壌有効水分量と作物養分量が高レベルで推移したと考えられた。収量調査の結果,作物生産量(馬鈴薯収量)も,湿性亜型圃場>乾性亜型圃場であることが認められた。
- 帯広畜産大学の論文
- 1980-11-29
著者
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