馬のCreatine Phosphokinase Isoenzymeに関する臨床生化学的研究
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概要
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CPKは骨格筋,心筋,平滑筋および脳神経に多く分布し,その寒天ゲル電気泳動法によるisoenzymeは陽極側より,CK_1,CK_2,CK_3の3分画に分離される。CK_1は脳神経および平滑筋,CK_2は心筋,CK_3は骨格筋に由来する。著者らは,馬の正常臓器および血清で,高活性値を示した腸変位,便秘症,筋炎ならびに肺炎のCPK isoenzymeを寒天ゲル電気泳動法により分画し,さらに,陰イオン交換体(DEAE-Sephadex A-50)カラムクロマトグラフィーにより溶出した分画をUV Rate assayで活性値を測定した。溶出液は50mM Tris-HCl緩衝液(pH7および8)を用い,NaCl濃度は50mM/l,200mM/l,300mM/lで,それぞれ密度勾配を作製し,ミニカラム(5×120mm)により溶出を行った。その結果,次のような成績を得た。1.正常馬臓器homogenateの寒天ゲル電気泳動法によるCPK isoenzymeでは,CK_1は脳および小腸・大腸に由来し,肺にもわずか認められ,CK_2は心筋由来で,小腸・大腸にわずか認められた。CK_3は主として骨格筋由来である。一方,正常馬血清では,CK_3がわずか認められたが,CK_1,CK_2はまったく出現しなかった。2.腸変位で重篤な疝痛症状を呈し,斃死した例では,CK_1,CK_2,CK_3の3分画がいずれも明りょうに認められた。恢復した例では,3分画ともに不明りょうで,経過とともにCK_2は認められなくなった。便秘疝では,予後のいかんにかかわらず,CK_3が明りょうで,CK_1,CK_2は腸変位に比べて不明りょうであった。仔馬の肺炎ではCK_3が明りょうで,CK_1も認められた。また,筋炎および筋肉障害例で,CPK高活性値を示す血清では,CK_3のみが明りょうであり,CK_1,CK_2は認められなかった。3.陰イオン交換体カラムクロマトグラフィーによるCPK isoenzymeではNaCl濃度50mM/l,200mM/l,300mM/lの溶出が3分画を分離するには最適である。溶出液のpHは7および8でも活性値にはあまり変化はなかった。腸変位で,総活性値2,018U/lを示した例で,NaCl濃度50mM/l分画の活性値は1,672U/l,200mM/l分画は190U/l,300mM/l分画は80U/lで,溶出液の総活性値は1,944U/lであり,原血清活性値に対する回収率は96.3%であった。また,3,502U/lと著しい高い活性値を示した腸変位例で,NaCl濃度50mM/l分画は2,632U/l,200mM/l分画は710U/l,300mM/l分画は123U/lで,溶出液の総活性値は3,465U/lであり,原血清に対する回収率は93.9%で,ほとんど100%に近いものであった。なお,前者は恢復しているが,後者は斃死した例で,3分画ともに増加をきたした。さらに,筋炎では活性値が323U/lで,比較的低い値を示した例で,NaCl濃度50mM/l分画は280U/l,200mM/l分画は22U/l,300mM/l分画は7U/lで,その総活性値は309U/lであり,回収率は95.7%であった。このように,重症な腸変位例ではCPK isoenzymeの分画値はともに高く,とくにNaCl濃度300mM/l分画では,筋炎と比較して著明な活性値の増加が認められた。4.カラムクロマトグラフィーによる溶出液の寒天ゲル電気泳動分析で,NaCl濃度50mM/l溶出液がCK_3,200mM/l溶出液がCK_2,300mM/l溶出液がCK_1分画として確認された。以上のことから,カラムクロマトグラフィーにより,抽出された溶出液は,それぞれCK_1,CK_2,CK_3分画に相当するもので,Autoanalyzer "ABA-100"を用いたUV Rate assayによるCPK活性値の測定は再現性も高く,しかも,原血清に対する回収率はほぼ100%に近く,本法は,CPK isoenzymeの定量としてはすぐれた分析法と言える。
- 帯広畜産大学の論文
- 1978-10-31
著者
-
清水 祥夫
帯広畜産大学獣医学科家畜薬理学教室
-
田村 俊二
帯広畜産大学獣医学科家畜薬理学教室
-
大石 秀夫
日高地区農業共済組合
-
池本 安夫
日高地区農業共済組合
-
大石 秀夫
帯広畜産大学薬理学教室
-
田村 俊二
帯広畜産大学
-
清水 祥夫
帯広畜産大 獣医
-
清水 祥夫
帯広畜産大
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