カラマツ材のクラフトパルプに関する研究 : 第5報パルプの単繊維強度[II]
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概要
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前報につづき,木材パルプの単繊維強度に関する基礎的な研究として,カラマツの辺材部と心材部の早材と晩材別に,パルプ化条件を変えて調製した未晒クラフトパルプの単繊維強度におよぼす化学組成の影響を検討した。結果の概要は,次のとおりである。1)辺材部および心材部ともに,晩材繊維の単繊維強度(g/f)は,早材繊維のそれの約3倍であり,また,細胞壁の単位断面積あたりの繊維強度(kg/mm^2)で比較した場合においても,前者は,後者の約2.5倍であった。この理由は,両繊維細胞の膜孔の分布状態や細胞壁の構造の相違によるためと思われる。2)長時間蒸解による低リグニン含量のパルプでは,単繊維強度(g/f)だけでなく,繊維強度(kg/mm^2)も減少した。この理由は,セルロースの重合度が低下するためと考えられる。しかし,重量あたりの繊維強度(単繊維強度(g/f)/パルプ収率)の減少度は,この単位断面積あたりの繊維強度(kg/mm^2)の減少度に比べて少ないことから,水飽和状態での細胞壁の断面積の測定方法が適当でなかったのかも知れない。3)水飽和状態でのパルプ繊維の横断面を円とみなして,繊維幅と内腔幅から,細胞壁の断面積を算出する方法は,簡便な方法であるが,細胞壁の化学組成が著しく異なるような場合には,膨潤度の相違が問題となる。しかし,この方法は,化学組成の近似した繊維間の相対的な比較には,十分利用できると思われる。4)化学パルプの細胞壁に残存するリグニンは,繊維の強度に寄与していないと考えちれる。一方,ヘミセルロースについては,リグニン含量やセルロースの重合度などとの関連で,必ずしも明確にできなかったが,ヘミセルロース含量の多い還元剤添加パルプには,リグニン量も多いにもかかわらず,繊維強度(kg/mm^2)やヤング率が低下しなかったことから,多分,繊維の強度に対して,正に影響しているものと思われる。
- 帯広畜産大学の論文
- 1975-06-10
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