限界生産地帯における水稲の生理気象学的研究 : 1.最近年における十勝地方稲作の気象要素と水温上昇について
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概要
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十勝地方は日本の稲作北限地帯の一部を形成する位置にあり,その気象条件は年々の変動が可成り激しく,冷害発生の比率もはなはだ高い。それで稲作を維持し,かつ発展せしめんとする限りは,年の豊凶を問わず常時冷害技術対策を必要とする。ビニールによる游水路の水温上昇は,簡単な着想であるが,未だかかる試みに接したことがないので,本実験を試みた。(1)昭和33年農期間の月別平均気温は最近数カ年中の最高を示したが,8月下旬から9月上旬の低温不照多雨のため,十勝地方としては昭和30年に比べて稲作気象において恵まれなかった。(2)典型的な冷水掛流し直播田において,総面積約6アール,延長約300mに及ぶ迂回游水路の一部をビニールフィルムで被覆し,水温上昇をはかった。(3)ビニールフィルム被覆による水温上昇の効果は,晴天日において高く,曇天日において低い。かつ,日出直後の早朝では,晴曇を問わず開水面より上昇が遅れるが,夕刻から夜半にかけての保温効果が認められた。(4)一般に水温上昇の効果は,限られた時間内での観測値には顕著に現われなかったが,出穂期以後の稲体の成熟促進が明らかに認められた。(5)収穫の安定度を高めるものとして,水口周辺の株調査では,収量構成要素としての籾数及び収量決定要素としての稔実歩合に可成りの好結果が認められた。(6)成熟期の稲の止葉々身内残留炭水化物の定量では,ビニールフィルムによる水温上昇区の同化産物転流が促進されていて,これが成熟期を早めたということが明らかにされた。以上の結果よりみて,本試験は今後ビニールの種類の選定,使用法,使用時期等を適切に行えば,水温上昇の効果をさらに高め得ることと思われる。
- 1959-06-30
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