Ll210マウス白血病組織培養樹立株の浮遊培養を用いた癌実験化学療法の研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
臨床効果の高い予言性を示すことが知られているL1210マウス白血病の組織培養樹立株浮遊培養細胞と初代培養細胞を用いて,各種制癌剤の試験管内作用様式を検討し,併せてこれら薬剤の生体内効果と比較を行なった結果,各種の薬剤はin vitroにおける作用の時間依存性や,対数増殖期と定常期細胞に対する効果およびin vivoにおける投与量の相違の点から分類されることを見出した。すなわち5-fluorouracil, methotrexate, cytosine arabinosideなどのデオキシリボヌクレオチド生合成を阻害する代謝拮抗剤およびvinblastine, vincristineなどの分裂阻害植物アルカロイドは時間依存性が強く,対数期細胞には低濃度で作用するが,定常期細胞には作用が著しく弱かった。一方nitromin, thio-TEPA, carbazilquinone,BCNUなどのアルキル化剤やmitomycin CのようにDNA2重鎖間に架橋形成を行なう薬剤およびchromomycin A_3, actinomycin D, daunomycin, adriamycinなど鋳型DNAに作用する抗生物質は時間依存性は弱く,細胞増殖時期による効果に差があまりなかった。またin vitro(ED_80)とin vivo(i.P., per mouse per day)の有効量を比較してみると,代謝拮抗剤,植物アルカロイドではその比は約1:1,700〜5,000,アルキル化剤,抗生物質では約1:4〜100と著しい差があった。このようにしてL1210細胞の試験管内浮遊培養系は,制癌剤の簡易な微量測定や,作様様式を予測するうえにすこぶる有用であり,制癌物質のスクリーニングへの応用は極めて能率性を高められるものと考えられた。さらにin vitroの成績は制癌剤の生体への投与法にも示唆を与えているものと思われた。
- 千葉大学の論文