放牧方法が草地生産性に及ぼす影響
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概要
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草地の放牧利用において,放牧方法の違いが草地の生産性にどのような影響を及ぼすかをみるため,昭和40,41年の2カ年間,実際に乳牛を放牧して最終生産物である牛乳の生産量からその草地の生産力を比較検討した。オーチャードグラス,赤クローバー混播草地2.0haを0.2haずつの10牧区に区分して集約輪換放牧草地(I草地)とし,2.0haを1.0haずつの2牧区として粗放輪換放牧草地(E草地)とし放牧利用に供した。肥培管理などは両草地同様とし,放牧余剰草は乾草として供試牛に給与した。両草地の放牧乳牛頭数は同じであって,初年目がホルスタイン種5頭,2年目がホルスタイン種5頭とガーンジー種1頭の6頭を草生に応じて増減した。濃厚飼料給与量は両群同量とし,初年目は牛乳生産量の約10%,2年目は約20%量とした。放牧日数は初年目154日間,2年目153日間で延放牧頭数は初年目310頭/ha,2年目405頭/haであった。初年目のFCM生産量はI草地4.9t/ha,E草地4.5t/ha,2年目はI草地6.8t/ha,E草地6.6t/haであって,2カ年ともI放牧が優ったが,その増加割合は初年目が9%,2年目が3%であって,牧区区分数の多少による放牧方法の違いは,草地生産性にそう大きな影響を及ぼさないことが明らかとなった。単位面積あたり延放牧頭数を初年目の310頭/haから2年目には405頭/haと30%ふやす結果となったところ乳牛1頭あたりの生産量は若干の減少がみられたが,単位面積あたりの草地生産FCM量はI放牧で22%,E放牧で30%と大幅に増加し,放牧方法よりも単位面積あたりの放牧頭数が草地生産性を左右する主要因の一つと考えられた。濃厚飼料給与量を初年目の0.5t/haから2年目の1.5t/haへと1.0t/ha増加したことによって,FCM生産量はI放牧で1.9t/ha,E放牧で2.1t/haそれぞれ増加し,本試験のような草地の利用方式では放牧期の濃厚飼料給与水準を牛乳生産量の10%程度とするよりは20%程度とする有利性が認められた。
- 日本草地学会の論文
- 1968-12-20
著者
-
寒河江 洋一郎
道立天北農試
-
広瀬 可恒
北海道大学農学部
-
小竹森 訓央
北海道大学農学部
-
裏 悦次
北海道大学農学部
-
寒河江 洋一郎
北海道大学農学部
-
吉田 鉦次
北海道大学農学部
-
裏 悦次
新得畜試
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