血液透析患者の低アルブミン血症と血清脂肪酸組成との関連
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概要
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血液透析患者(HD患者)の生命予後を左右する重要な因子として、血中アルブミン濃度の低下が知られているが、これを定義づけるメカニズムはあきらかにされていない。血清中の多価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比率(S-P/S比)は、低たんぱく栄養状態を示す栄養因子ではないが、HD患者でしばしば見られる動脈硬化発症との関係が知られている。このS-P/S比と低アルブミン血症との関係を調査するために、103名のHD患者と171名の正常者の血清脂肪酸分画を測定して比較を行い、さらにHD患者において18ヶ月間追跡調査を行った。方法は、この分画からS-P/S比を算出し、四分位(Quartile : Q1-Q4)による血清アルブミン値(S-alb)の関係を調べた。またS-alb濃度と関係する因子について、年齢、S-P/S比、総コレステロール、トリグリセリド、クレアチニン、たんぱく異化率(normalized protein catabolic rate : nPCR)の影響を評価した。結果、S-albはHD患者でS-P/S比と関係があり(P<0.05)、低アルブミン血症の独立した因子であることを示した。血清脂肪酸分析後の18ヶ月間の追跡調査の間に、14名のHD患者が死亡した。生存者89名のS-albおよびC反応性たんぱく(C-reactive protein : CRP)を測定し、Quartile間での比較を行った。死亡率はS-P/S比の最も低い患者(Quartile1 : Q1)で、他のQuartile 2〜4(Q2-Q4)の患者群より高値を示した。またS-albは、Q1の患者で他のQ2-Q4の患者群より有意に低値を示し、CRPはS-P/S比の低いQ1とQ2の患者群において、S-P/S比が高値を示したQ3とQ4の患者群より有意に高値を示した(p<0.05)。本研究から、HD患者のS-P/S比は、低アルブミン血症と炎症反応と関係する可能性があることが示唆された。
- 2007-01-31