生体外培養環境下での腱組織の負荷に対する反応に関する生体力学的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
生体組織は,力学的環境の変化に適応してその形態や力学的特性を変化させることが知られており,腱や靭帯を含む軟組織もこのようなリモデリング(組織再構築)の能力を有することが明らかになってきている.これまでに,除荷や過負荷などの力学的負荷の変化に対する腱や靭帯のリモデリングに関する様々な生体内(In vivo)実験が行われてきたが,生体内ではリモデリングに影響を及ぼす因子の限定が難しいために,そのメカニズムについては未だ十分に解明されていない.このような生体内実験の問題を克服するには,組織に作用する力学的負荷を任意にしかも定量的に変化させることができる生体外(In vitro)組織培養法が極めて有効な手段となる.本稿では,生体外の培養環境下における種々の負荷に対する腱組織の生体力学的応答に着目した研究の結果を紹介するとともに,腱・靭帯のリモデリングに関する過去の生体内実験の結果と比較検討した.得られた実験結果より以下のことが示唆された.(1)培養環境下での腱組織は,静的応力および繰り返し応力の大きさに応じてその力学的特性を機能的に変化させる.(2)負荷軽減よりも過負荷に対して,腱組織の力学的特性はより敏感に変化する.(3)腱組織の強度を維持するのに最適な負荷応力は,生体内で腱組織に作用する負荷の大きさと同程度である.(4)培養腱組織の力学的特性は,繰り返し応力の大きさだけでなく,負荷周波数および負荷時間にも依存する変化を示す.(5)無負荷環境に曝されたことで低下した腱組織の強度が,再負荷によって回復するにはかなりの長期間を必要とする.これらの結果が示すように,負荷の大きさ,負荷様式,負荷周波数,負荷時間,および除荷後の再負荷が培養腱組織の生体力学的応答に及ぼす影響は,生体内でみられる腱・靭帯のリモデリング現象と本質的に同様であり,培養腱組織が曝される力学的環境に機能的に適応することが明らかになった.
- 2007-03-31
著者
関連論文
- 437 ヒト椎体海綿骨のクリープひずみに及ぼす静的または繰り返し負荷の影響(GS-12 : 骨・軟骨(1))
- B117 過負荷作用後のヒト椎体海綿骨の疲労挙動(B1-3 硬組織)
- 生体外培養環境下での腱組織の負荷に対する反応に関する生体力学的研究
- 生体組織のリモデリング
- 第4回アジア太平洋バイオメカニクス会議参加報告
- 近畿大学 生物理工学部 生体機械工学科バイオメカニクス研究室
- 1日30分だけ(リレー随筆)
- 生体内で腱・靭帯に作用する張力の測定