医療用放射線の物理過程シミュレーション : 量子エネルギーのゆくえを探る(第34回秋季学術大会特別講演)
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概要
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生体組織への放射線被曝において,放射線粒子から組織内の細胞を構成する原子・分子へのエネルギー移行には電子が重要な役割を果たす.例えば,光子線や陽子線を物質へ照射したときには,それら照射粒子そのものによる直接的な相互作用過程(衝突過程)よりも,光子線であれば光電子やコンプトン電子あるいはオージェ電子,陽子線であればδ線(電離能を有する電子)が,より効率的に原子・分子に作用する媒体となる.原子・分子への作用はミクロには主として軌道電子へのエネルギー移行であり,原子・分子の電離や励起をもたらすことを意味し,分子結合の直接的切断やラジカル種の生成と反応を通じて,細胞内高分子の損傷を引き起こす.したがって,放射線による生体組織の損傷を議論する際には,入射粒子(一次粒子)のほか,それによって発生される二次的な電子と原子・分子との衝突過程を考慮しなくてはならないことが分かる.こうしたことは定性的には理解されてきたと思われるが,化学的段階を経て生物学的影響までに至るストーリーの初期条件として,今後ますます求められるべきことは,それらの定量であるに違いない.筆者はこれまで,診断での低線量被曝から治療時の高線量被曝に至るまでの生体組織中放射線粒子の物理過程を明らかにすることを目的として,モンテカルロシミュレーションによって分子レベルでのエネルギー付与過程を調べてきた.本稿では,以下のシミュレーション対象を採り上げ,これまでに得られた知見について紹介したい.(1) 水中電子線のトラック解析(2) 水中陽子線Braggピーク近傍でのエネルギー付与過程(3) 新しいタイプの固体検出器における電子過程
- 2007-10-20
著者
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