Aharonov-Bohm効果をもう一度考えよう(ゲージ場の誘起の基礎,ゲージ場の起源,研究会報告)
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概要
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この講演ではAharonov-Bohm(AB)の散乱問題[1]について、特にその入射波として採用すべきものは何かに重点を置きながら再度考えてみた。ここで用いる方法は二通りあり、その一つは散乱問題の標準的な取り扱い方と考えられるLippmann-Schwinger(LS)方程式を用いるもので、もう一つはCoulomb力のような遠距離力による散乱の場合にひとまず問題を有限の到達距離を持つものに置き換えて、最後にその到達距離を無限大にする方法である。これは実はCoulomb散乱を考えるためにGordon[11]によって考案されたものである。どちらの場合にも、入射波には平面を用いたにもかかわらず、得られた散乱状態の波動関数はABの求めたものに一致した。これら二つの方法が同一の結果を与えることが問題の解き方に矛盾のないことを示していると考えられるであろう。第一の方法を用いるにあたって、この問題に対してBorn展開はうまく機能しないことが知られているので、まず経路積分の方法によりFeynman核を求め、その情報をLS方程式に用いることでその厳密解を求めた。研究会の時点では十分よく理解していなかった問題としてS matrixの性質についての考察を追加した。平面波とABの場合との入射波の違いのために、平面波を用いる場合の散乱振幅にはABの求めたもののほかに前方のδ関数が必要なことが示される。前方以外の散乱実験を考察するためならばABの散乱振幅で十分だが、散乱振幅というものはS matrixとの関連で理解すべきものと考えると、α=-eΦ/2πhcが整数でも奇数の場合にはS matrixは1にはならない。すなわち電子はvector potentialの影響を受けることがわかる。
- 素粒子論グループ 素粒子研究編集部の論文
- 1996-08-20