新たな骨誘導型生分解ポリマーを用いた指骨の再生誘導
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概要
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(目的)これまで,われわれは,骨・軟骨組織の再生誘導を行う際,細胞の足場となる生分解性ポリマーとしてpoly (L-lactide-ε-caprolactone)(P(LA-CL))を用いてきた.しかし,P(LA-CL)は,力学的強度が不足していた.そこで本研究では,生分解性ポリマーP(LA-CL)に,高い力学的強度と骨伝導能を有するセラミックス粒子(Hydroxyapatite,β-tricalcium phosphate)を付加して,新しい骨誘導型の生分解性ポリマーを開発した.さらに,この新型ポリマーをヒト指骨モデルに導入して,指骨の再生能と有用性について比較検討した.(方法)仔ウシ橈骨より採取した骨膜を,ヒト指骨形状を有する3次元生分解性ポリマーと組み合わせて複合体を作成し,ヌードマウスの背部皮下に移植した.移植後,10週,20週にて標本を取り出し,(1)肉眼的観察,(2)単純X線写真による検索,(3)組織学的検索,(4)メカニカルテストを行った.実験群として,(1)P(LA-CL)群(2)HA-P(LA-CL)(3)β-TCP-P(LA-CL)の3群を設定した.(結果およびまとめ)肉眼的所見では,すべての群において3次元構造が維持されていた.しかし,単純X線写真による所見および組織学的所見では,P(LA-CL)群に比較して,HA-P(LA-CL)群およびβ-TCP-P(LA-CL)群において,著明な骨形成が認められた.また,メカニカルテストでは,P(LA-CL)群に比較してHA-P(LA-CL)群およびβ-TCP-P(LA-CL)群において,有意な力学的強度の増加が認められた.これらの結果より,セラミックス粒子を含有した新たな生分解性ポリマーを足場とすることにより,早期の骨再生および3次元構造の維持が可能となることが示唆された.
- 2006-12-25