超電導質量分析装置のための低熱伝導配線の開発
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概要
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超電導を利用した粒子検出器を飛行時間質量分析に用いると,従来不可能であったたんぱく質等の巨大分子の測定が可能となる。その0.3K以下の動作温度を保ち,かつノイズを最小限に抑えるため,極低温からの信号読み出しには熱伝導率のできるだけ小さい,同軸ケーブルを用いる必要がある。従来配線に用いられてきた70-30CuNi(キュプロニッケル)合金の熱伝導率は,機械加工を施すことで生じる格子欠陥により減少するといわれており,実際に用いる同軸ケーブルの熱伝導を調べ,それが十分に小さいことを確認したうえでなければ,冷凍機に実装することはできない。そこで0.3-4.5K付近で極細線の微小な熱伝導率を計測するツールを開発し,70-30CuNiとPTFE(polytetrafluoroethylene),およびそれらからなる同軸ケーブルの熱伝導率を実際に測定した。70-30CuNiの熱伝導率は文献値よりも最大で40%程度小さく,機械加工の影響が現れたものと考えられる。この同軸ケーブル100本で0.3Kの超電導検出器と冷凍機の3Kステージをつないだ場合,0.3Kへの熱流入を冷凍機の構造に起因する熱流入の10分の1以下にできることが確認できた。同軸ケーブル100本を実装し,およそ1週間の極低温環境の持続,さらに超電導検出器からの信号取得に成功したので報告する。
- 旭川工業高等専門学校の論文
- 2007-03-05
著者
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