契約締結に対する信頼を損なった第三者の信義則上の責任 : 最高裁平成一八年九月四日第二小法廷判決(裁時一四一九号六頁) 原審:東京高裁平成一七年二月一六日判決(刊行物未登載)、 第一審:不明
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概要
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契約準備交渉段階において契約締結に対する相手方の信頼を裏切って契約交渉を不当に破棄した者は、それによって生じた相手方の損害を賠償する責任を負う。こうしたいわゆる交渉破棄(挫折)型の「契約締結上の過失」責任については、従前から学説主導による理論面での整備が図られ、それを肯定する裁判例も数多く集積されてきた。言うまでもなく、そこでの責任規範の対象とされてきたのは、まさに契約を締結しようと交渉を進めている契約交渉当事者であった。そうした議論状況に一石を投じたのが、本稿で研究の対象として取り上げた最高裁平成18年9月4日第二小法廷判決である。本判決は、契約交渉関係にはない(将来的にも契約を締結することのない)第三者が契約準備を進めている当事者の契約締結に対する信頼を不当に損なったとして当該第三者に信義則上の責任を認めた。そこから浮上する法命題は、信義則に基づく信頼責任法理の射程がまさにそうした第三者(非契約交渉当事者)にも及びうるということである。このような「第三者の契約挫折責任」が問われたのは裁判例上も初のケースであり、学説もこれまでそのようなケースを議論の念頭においてさえいなかった。だが、交渉関係にない第三者が契約挫折責任を負う可能性を肯定するとき、信頼責任とは別に従来から交渉破棄の帰責根拠の一つとして展開されてきた熟度論や中間的合意論などの説明は、もはや法的フィクションとしての体裁を保つこともできなくなる。その意味でも、契約締結上の過失の問題領域において本判決が有する重要性はきわめて高く、また、同じく「第三者の契約責任」として括られる問題領域とも密接な関連性を有するものと思われる。本稿は、交渉挫折の帰責根拠に関する従来からの議論と契約関係にはない第三者の責任(とりわけ第三者による情報提供責任論)との連関から、第三者の契約挫折責任を肯定した本判決の意義ないし位置づけとそれが信頼責任法理の議論全般に及ぼす影響について考察したものである。
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