分散的発行通貨と集中的発行通貨の特性比較-LETSを使ったランダム・ネットワーク・シミュレーションによる-
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本稿では,対極的な性質を有する集中的発行通貨(法定通貨)と分散的発行通貨(特定の地域通貨)をモデルによって表現し,コンピューター・シミュレーションを実行することによりLETSのような相互信用・分散的発行方式の持つ長所を明らかにすると同時にその課題を考察した。 LETSの相互信用・分散発行方式の利点は,経済取引に必要とされる通貨バッファがマクロレベルでもミクロレベルでも必要ない点にあり,そのことは貨幣保蔵による有効需要の抑制を引き起こさないことを意味する。一方で、LETSは受領性が個人の相互信頼に基づくため,その流通範囲は相互信頼でつながれる範囲に制約される。流通範囲を拡張するには,コミュニティへの信頼,相互信頼の範囲を拡張する必要性があり,いかなるシステムやルールの導入が有効であるかが今後の検討課題として残されている。逆に、集中的発行通貨は流通範囲が広範であるが,貨幣保蔵による有効需要抑制という課題を持つ。 また,ランダムネットワークに基づくLETSにおけるマクロ的黒字残高=マネーサプライは売買による債権債務の相殺により長期的には残高0に収束するという直感に反して,逓減的に増大する。このメカニズムを解明し,そこからLETSと現金通貨に関するいくつかのインプリケーションを引き出し,検討を加えた。
- 北海道大学の論文
- 2007-09-06
著者
関連論文
- 法定通貨と換金可能な紙券型地域通貨の経済効果 -ランダムネットワークシミュレーションによる-
- 分散的発行通貨と集中的発行通貨の特性比較-LETSを使ったランダム・ネットワーク・シミュレーションによる-
- 進化主義的制度設計におけるルールと制度 (唐渡興宣教授記念号)
- Network Analysis of the Traffic Lines of the Tourists visiting Kamikawa Central District in Hokkaido, Japan : Based on the Data from the 'Kamui Mintara' Stamp Rally
- 3.地域通貨の流通ネットワーク分析 : 経済活性化とコミュニティ構築のための制度設計に向けて(複雑ネットワーク科学の拡がり)
- 進化主義的な制度設計(システム論の新領域)
- 制度生態系の理論モデルとその経済学的インプリケーション
- 地域通貨による電力政策の構想