中国の半導体産業における垂直非統合生産システムの形成と発展

概要

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本稿の目的は、2000年以降中国半導体産業における生産規模の拡大と生産システム推移との関連について考察するところにある。1995年から中国の半導体市場規模が一貫して拡大してきたが、生産システムの推移と生産規模の拡大が発生したのは1999年以降であった。こうして市場規模や生産規模の拡大、そして生産システムの推移がどう関連するのかが重要な課題となった。1999年代末以降中国の半導体産業は、2つの力の作用によって既存の垂直統合を中心とした生産システムから垂直非統合の生産システムへとシフトした。この2つの力は新規ファウンドリの設立および統合型企業における製造受託事業化である。このような生産システムの垂直非統合へのシフトは、生産規模の拡大を牽引した要因であった。垂直非統合の生産システムが2000年までにはファウンドリの不在によって発展しなかった。 1990年に中国政府は本格的な半導体産業政策を打ち出してから、1978年改革開放が実施される前の基礎を継承し、専業設計企業とパッケージ企業の育成に力を入れてきたが、ファウンドリの育成には力を入れなかった。2000年以降海外大手企業における新規製造委託需要の急増、海外大手企業からの製造技術の導入が可能になったこと、などの要因によって、ファウンドリが中国で成立した。すなわち、ファウンドリが中国で成立できたのは、中国国内の要因よりも、海外大手企業による市場と技術の提供によるものが大きい。一方、中国政府が1990年から2000年までの10年間、力を入れて育成しようとした6つの統合型企業が、1990年代末からともに垂直統合の生産システムの維持が困難になり、相次いでファウンドリなどの製造受託事業に転換した。ファウンドリの設立は、設計、パッケージ段階の成長を牽引するのみならず、川下産業との産業関連効果および産業集積効果を同時に生み出すようになった。このようにファウンドリが設立される以前に、垂直非統合が発展できなかった要因への検討、およびファウンドリが設立された後、もたらされた垂直非統合の生産システムの発展という観点からの検討によって、2000年以降、中国の半導体産業の生産規模が急速に拡大したことは、生産システムの垂直非統合への推移と関連することが確認できた。ファウンドリの設立によって垂直非統合が発展する十分条件が満たされるようになり、そして垂直非統合の発達によって半導体産業の生産規模を拡大することが可能になったのである。従って、古典文献において市場規模の拡大は垂直非統合(分業)を促進すると述べられているが、本稿における中国半導体産業発展の考察により、市場規模の拡大は垂直非統合(分業)発展の必要条件であり、垂直非統合が発展するために、十分条件が備わる必要があるというインプリケーションを導くことができた。また、中国の半導体産業発展の事例を通じて、半導体産業が垂直統合あるいは垂直非統合の採用によって産業発展を求める際には、それぞれの生産システムの成立と発展条件を満す必要があるというインプリケーションを導くことができる。
2006-09-30

著者

王淑珍
北九州市立大学

中国の半導体産業における垂直非統合生産システムの形成と発展

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