デジタルカメラ付携帯情報端末機器を使用した食事調査法の疫学研究への応用
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概要
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IT技術を活用した食事調査法が,新しい食事調査法として疫学研究に利用可能かどうかその妥当性と実用性を検討した.妥当性については,本学教員及び学生(女性25名,24.9±7.6歳)を対象として2003年4月下旬から8月下旬に実施した.不連続の2日間を調査日とし,ゴールドスタンダードとして秤量食事記録法(DR)を採用し,デジタルカメラ付携帯情報端末機器法(DC)と同時に実施した.DR法によって全ての飲食物を原則として生状態で秤量し記録した後,飲食物を調理後盛り付けた状態でDCによって撮影し,画像を送信した.両方法の平均値を比較した結果,炭水化物と食物繊維に有意差が認められたが,相関係数は,ナトリウム以外はすべての栄養素等で有意な正相関が示された.DR法は対象者の負担が非常に大きいが,摂取食品を計量する必要がないDC法は,ナトリウム以外は妥当性の高いことが示された.実用性については,都市の男性勤務者(36名,43.2±7.5歳)を対象とした.2003年8月下旬から11月下旬にかけて,1週間のうちに平日を3日間,休日を1日間の合計4日間の食事について,DCを用いて栄養素等摂取量を評価した.対象者36名のうち,1度の調査で4日間の食事を漏れなく撮影できた者は4名しかなかった.残り32名に再調査を行い,最終的に4日間の食事を撮影できたものは22名であった.再調査を行わなければならなくなった原因は,撮影漏れ,撮影ミス,残食撮影漏れ,食品摂取量を推定するための目安である専用ペンを置忘れた状態での撮影,端末不良であった.画像を送信出来なかった原因としては,DC機器の携帯を忘れた,PHSの電波が入らなかった,面倒だった,時間がなかった,人目が気になった,などが挙げられた.DC使用後に実施した質問票では,日常生活上の問題点として,付き合いがしにくい,外食しにくい,旅行しにくい,が挙げられた.本研究の結果より,食事調査法として簡便な方法であると思われたDCが,対象者にとって負担が大きかったと考えられる.個人レベルで平均的な1日の栄養素等摂取量を求めたい場合,DCの複数日の調査は困難であると考えられる.集団の平均値の把握や集団レベルでの比較に利用できる可能性が高いことが示された.
- 武庫川女子大学の論文
著者
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福井 充
大阪市立大学大学院医学研究科推計学研究室
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福井 充
大阪市立大学 公衆衛
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伊達 ちぐさ
奈良女子大学食物栄養学科
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伊達 ちぐさ
奈良女子大学
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伊達 ちぐさ
武庫川女子大学生活習慣病オープン・リサーチ・センター
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伊達 ちぐさ
奈良女子大学生活環境学部食物栄養学科
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福井 充
大阪市立大学大学院医学研究科
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古川 曜子
奈良女子大学大学院人間文化研究科共生自然科学専攻
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田路 千尋
奈良女子大学大学院人間文化研究科共生自然科学専攻
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古川 曜子
武庫川女子大学生活環境学部食物栄養学科
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中村 芳子
NTT西日本関西健康管理センタ
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古川 曜子
武庫川女子大学生活環境学部
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