有機酸代謝異常症のスクリーニングに関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
有機酸代謝異常症の診断を目的に,ガスクロマトグラフィ質量分析計による尿中有機酸分析法を検討した。有機酸代謝異常症のスクリーニングに応用するためにパーソナルコンピューターを導入し,有機酸の同定と定量を単純化し,病名診断を迅速化したスクリーニングシステムを開発した。22種の有機酸代謝異常症をスクリーニングするために,48種の尿中有機酸をリバースサーチ法で同定し,定量は特定イオンと内部標準として加えたヘンエイコサン酸のm/z 383のピーク高比でおこなった。この処理にパーソナルコンピューターを導入した。本定量法はクエン酸を除く他の有機酸で,1-500μgの範囲で測定可能であり,再現性,回収率ともに良好であった。本定量法を利用して,正常対照尿と数例の有機酸代謝異常症尿の尿中有機酸排泄量を測定し,各有機酸のカットオフポイントを求めた。病名診断は,カットオフポイントを越える異常有機酸のリストをもとにおこなった。この過程にもパーソナルコンピューターを利用し,診断を迅速化した。既に有機酸代謝異常症の診断が確定している7疾患,15症例で,このプログラムを用いて病名診断をおこなったところ,すべての症例で正しく病名診断され,false negativeはなかった。本スクリーニングシステムを利用して,昭和59年から61年の3年間に総数500症例を対象に,有機酸代謝異常症のスクリーニングを施行した。メチルマロン酸尿症,プロピオン酸尿症,マルチプルカルボキシラーゼ欠乏症,グリセロールキナーゼ欠乏症それぞれ1例と,ジカルボン酸尿症6例,高乳酸尿症4例の化学診断に成功した。またフェニールケトン尿症1例を再確認した。7疾患15症例を発見することができた。スクリーニングの有効率(effectivity index)は,3.0%であった(15/500)。
- 千葉大学の論文
著者
関連論文
- 2.尿細管機能異常疾患における腎の1,25-(OH)_2Dの産生能に関する検討(第4回千葉カルシウム代謝研究会)
- 液体イオン化質量分析法による新生児尿の直接分析
- ライ様症候群を示した乳児型(肝型)カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII欠損症の1女児例
- 先天性高アンモニア血症18例における生命予後,神経学的予後についての検討
- GC/MSによる有機酸代謝異常症の自動病名診断システム
- 悪性貧血における各種検査値の変動とそれらの有用性
- 有機酸代謝異常症のスクリーニングに関する研究
- 液体イオン化質量分析法による先天性代謝異常症尿中有機酸検出における硝酸の添加効果