外傷性髄液漏の診断における研究
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概要
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外傷性髄液漏は脳神経外科領域の重要な疾患の1つであるが,実際の日常診療にあたり個々の症例においては,今日でも髄液漏の有無や漏出部位の正確な診断は必ずしも容易ではない。そこで本疾患の診断にcomputed tomography (CT)を応用し,従来の放射線学的検査法との比較検討を行なったところ,次のような結果を得た。1)通常行なわれている1cm幅のスライスの水平断における単純CT (PCT)は本症の重要な徴候とされている副鼻腔の混濁(sinus clouding)や気脳症の検出に優れており,特に後者については極めて有用であった。すなわち髄液鼻漏患者で頭部単純写上に気脳症の認められた者は19.1%に過ぎなかったがPCTでは61.9%に見られ,髄液耳漏患者では単純写上これの認められた者はなかったが,PCT上は16,7%に見られた。2)髄液鼻漏患者における前頭蓋底の骨折部位の検索に1.5mmスライスの水平断PCTや5mmスライスの前額断PCTあるいはreconstructionも行ない有用な結果を得た。特に前額断PCTでは従来の多重断層撮影に比して明瞭に骨折部位を描出でき,より詳しい情報を得ることができた。3)metrizamide CT (MCT)も試みた結果,これを施行し得た髄液鼻漏患者の4例中2例,髄液耳漏の2例中1例に漏出部位を証明することができた。MCTはRI cisternographyに比較してより正確な漏出部位を知ることができ,本法により陽性所見を得た場合には髄液漏の最も確実な診断となる。以上のことより,CTは外傷性髄液漏の診断およびその後の患者管理あるいは手術適応を決定する上で極めて優れた検査法と言える。
- 千葉大学の論文
- 1984-10-01
著者
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