報道による意見形成効果 : NIEへの指針
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概要
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活字に慣れさせたり、発言能力を高めさせたりすることを狙いに新聞を用いた教育(NIE=Newspaper in Education)が小中高等学校で行われている。新聞の重要な機能の一つは、記事や論説を通じて、人々の意見や考え方の形成に影響を与えることである。しかし、同じニュース源に接し、同じデータに基づくニュースであっても新聞によって、記事の伝え方や論説の内容に違いがある。記事や論説によって読者の考えが大きく左右されるとしたら、情報源が同じニュースであっても特定のメディアの特定の記事だけをNIEの実践活動に利用すると、教育の名において偏った見方を助長する可能性が出てくる。事実、筆者が高校生を対象に実施した「新聞記事による意見形成影響調査」によると、その効果はきわめて大きいことが分かった。NIEは児童・生徒に新聞記事を提供して討論させたり感想を述べさせたりすることで活字に慣れさせ、発言能力を高めさせることなどを大きな教育目標としているが、新聞の利用法によっては児童・生徒にモノクロ思考を生じさせかねない。教育の重要な目的のひとつは、児童・生徒に偏りのない公平なものの見方、多様な考え方を育ませることである。そのためには、多様で多面的な記事を提供するとともに、必要な場合は記事の内容を補うだけの資料を提供することが望まれる。
- 2006-03-20
著者
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