架橋型湿式紡糸法による超高強力高弾性率ポリビニルアルコール繊維の構造と物性に関する研究
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概要
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架橋型湿式紡糸法で製造した超高強力高弾性率PVA繊維B-22の、微細構造の解析、並びに高温下の性質等の評価を、小角、広角X線、密度、動的粘弾性、DSC、乾熱及び湿熱収縮率、等々の測定により行い、非架橋型紡糸繊維N-12と比較して検討を加え、次に示す実験結果を得た。(1)高延伸を加えることができた本紡糸法による超高強力高弾性率繊維Code No B-22の密度は1.324であり、従来法の繊維、N-12の密度1.315と比較して、大きな値が得られた。この密度の値から結晶化度の算定を行ったがその結果、B-22は0.731、N-12の場合は0.605の値が得られた。これらの値を用いて繊維の内部構造が、結晶相と非晶相の直列モデルから成り立つと考えた場合の関係式から、繊維の非晶相の弾性率E_aを求めた結果、E_a(B-22)=1176kg/mm^2、及びE_a(N-12)=494kg/mm^2、の値が得られ、B-22の場合、高延伸高配向によって非晶領域の弾性率が著しく向上し、その結果繊維の弾性率が大きく改善できたと考えられる。また、小角X線写真、及び子午線方向の小角X線散乱強度(長周期)の測定結果からも、非晶領域が高延伸によって高配向され、結晶相との密度差が少なくなっていることを支持する結果が得られた。(2)Hosemann Plot、から結晶の乱れ(gII)の定量を行ったが、高延伸を加えたB-22の結晶の乱れは2%で、N-12の1.2%よりも大きく、またX線小角散乱像、及び動的粘弾性等々から判断しても、高延伸によって非晶相の配向度が向上し非晶層と結晶層の密度差が著しく減少していると考えられる実験結果が得られていることから判断して、繊維の内部構造はパラクリスタル構造化していると考えられる。(3)また、このような構造からなるB-22は、乾熱、湿熱を問わず高温下の性質が従来法によるPVA繊維と比較して著しく改善されていることが明らかとなった。
- 大阪城南女子短期大学の論文
- 1989-12-22