酪農経営の因果構造分析 : 全国基礎調査からの接近
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概要
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戦後,急速な規模拡大を推し進めてきたわが国の酪農経営は,一方では過剰な輸入飼料依存や糞尿公害などの問題などを引き起こし,近年では市場の低迷なども加わり,大変厳しい状況にある.今後も環境面での各種規制の強化や飲用生乳の輸入自由化なども予想されることから,早急に新たな展開方向を探る必要がある.本研究は,その最初の段階として,酪農全国基礎調査のデータをもとに,現在,経営内容がどのような要因と構造で決定されているのかを,それらの因果関係を含めて分析した.その結果,以下のようなことが明らかになった.まず,クロス集計などの記述的な分析からは,(1)経営主の平均年齢は54歳で,2〜3名による家族経営が大半であること.(2)新しい技術や設備の導入率を始めとした多くの経営指標で規模との相関が見られるが,生産成績や臨時雇用者数などでは規模との関連性は確認できないこと.(3)酪農後継者については,特に北海道で恵まれているが,良好な経営であることよりも就業の機会に恵まれていないことが影響していることなどが明らかになった.次にSEMを用いた計量的な分析からは,(4)多くの経営内容や将来計画に影響を与えているのは,経営主の積極性であるが,それを規定しているのは,現在の経営規模や年齢であること.しかしながら,(5)積極的な経営でも生産成績を向上させることは難しいことなどがわかった.以上のことから,険しい将来が待ち受けているわが国の酪農経営に処方箋を書くに当たっては,経営主の年齢や営農地域などの所与の環境に応じつつも,多くの経営指標に直接・間接的な影響を与えている「経営主の積極性」を向上させるような指導・支援内容を策定することが効果的であるといえるが,乳量などの生産成績については別途方策を練る必要があろう.
- 2006-03-31
著者
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