女が働くということ : 『ベッシーの悩み』を読む
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概要
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物質的に繁栄した英国ヴィクトリア女王の時代ほど、いわゆる良妻賢母の女性が理想とされた時はない。家事の切り盛りが上手で、夫に奉仕し子供を立派に養育する女性像が、規範として様々な言説を通して広く国民の間に定着していく。この風潮の中で、当時の流行作家ギャスケル夫人による『ベッシーの悩み』も、例外ではなく、家庭において女性が果すべき義務を重視している。そこでは、女性が賃金労働に従事することによって、家庭の機能が妨げられる不幸が描かれている。一方において、自分自身の生き方を自由に決めたいと願う若い女性の微妙な心理の深層が、階級社会と性に関する制度との関連において探求されている。女性が自己実現を求めることは、周囲の人々の持つ役割期待を裏切る結果となる。家庭領域での女性の過大評価は、多くの社会的活動から女性を排除する危険性を持つ。この両者の葛藤を知る作者は、単純に「家庭の天使」を讃美しないし、「新しい女」をも志向しない。家庭内の仕事は無償であるが、それは生活の基本にあり現実そのものであるが故に、男女共通して係わる必要性が、読者に提示される。女にとって職業と家庭を両立させる鍵は何であるかを考察するという視点から、『ベッシーの悩み』の読みを試みる。
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