情報会計の特質と電子開示システム
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
伝統的な会計は、紙媒体を前提とした会計システムであり、それは情報提供者からその利用者への一方的伝達システムであった。しかし、コンピュータ機器や情報処理技術等の飛躍的な発展をなした高度情報化社会にあって、会計もこうした情報化社会に対応した会計システムの構築が急務な課題となっている。コンピュータをベースにした会計理論の研究は、米国において特に1960年代後半から意欲的に行われており、わが国においても同様の研究が行われてきた。そして、近年では紙媒体から電子媒体による会計情報の提供が、社会的要請となっている。米国ではすでに電子媒体による会計情報の開示が実現可能な情況になっており、わが国においても、これと類似したシステムの実現化に向けて取り組まれている。こうした会計環境の変化を踏まえ、本稿では主として、次の3点について言及している。第1に、電子開示システムの理論的基盤となる情報会計の特質について明らかにする。情報会計は、利用者の意思決定に役立つ会計情報を提供することを目的とした、いわば利用者指向の会計である。したがって、要請される伝達システムは、情報提供者からその利用者への方向に加えて、利用者から提供者へ情報要求を行うことのできるフィードバック機能をもった相互的・間接的コミュニケーションの形態をとっている。第2に、情報を利用者に開示するための開示基準としては、(1)開示される情報が正確かつ詳細であることを要請する「開示情報の正確性」、(2)情報を得やすい立場の利用者と、入手困難な利用者との格差をなくすための「情報開示の公平性」、(3)意思決定に必要な情報が必要な時に提供されるという「情報開示の適時性」、(4)利用者にとって解読可能性をもたらす情報であることを要請する「開示情報の有効利用」の4つが掲げられる。これら基準によって得られる効用は、それに要する費用と比較されなければならない。第3に、大蔵省が取り組んでいる電子開示システムは、(a)証券市場の効率性と公平性の増大、(b)証券市場の国際競争力の維持・強化等を目的とし、その機能面は、(1)届出・受理システム、(2)審査システムおよび(3)情報伝達システムから構成されている。このシステムを実現するためには、データの編成方法、ネットワークやセキュリティーの確保をどうするか、電子媒体による開示に適した規定をどのようにするか、電子開示システムの管理・運営主体とこれに要するコストの負担をどうするかといった種々の課題を検討する必要がある。
- 静岡産業大学の論文
- 1999-03-31
静岡産業大学 | 論文
- シリコンの第1原理局所擬ポテンシャルの開発
- Orbital-Free第1原理分子動力学法における電子の運動エネルギー汎関数の評価
- 日本アニメ産業の現状と課題
- 手作り絵本のデジタル化
- 1次元最適施設配置問題(2) : 最適施設配置の分布について