ボタンタケ目とその分生子時代の分類学的研究XIII. : 相模灘沿岸林で採集されたボタンタケ科の種
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概要
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相模灘沿岸城ヶ崎海岸の海岸林および下田市須崎御用邸内のスダジイを中心とする森林,神奈川県真鶴岬および小田原市入生田地区の森林のボタンタケ科菌類を調査した結果,26種以上が認められた.多くの標本については,未だに種レベルの同定が完了していない.採集標本には,ボタンタケ属の2新種が含まれる.Hypocrea sagamiensis DoiはH. cerebriformisに近縁の種で,子座の形状は本群の他種に比して小型かつ十分に発達しない子座は厚みのある円盤状で,時によく発達した子座は脳状の外見を示す.本種のカビ時代(アナモルフ)はT. longibrachiatsum型で,その生長速度はトリコデルマとしては遅い.厚壁胞子は通常のPDA(馬鈴薯寒天培地)上では認められない.現在確認された分布域は,静岡県伊東市城ヶ崎海岸,神奈川県真鶴市真鶴岬地域のみである.Hypocrea chrysofulva Doiは,すでに東京都内の自然教育園,皇居内吹上御苑および常陸宮邸の人工林のみに分布することが明らかになっていたが,その分布域が都内の人工林に限られていることから生物学的種として認められるか,疑問があり,従来は裸名として扱ってきた.ところが,今回の相模灘沿岸林の調査で城ヶ崎海岸の沿岸自然林にも分布していることが確認され,新種としての記載報告に踏み切った.本種はH. albofulvaに良く似た,薄く広がる(effuse)子座を持つが,若い子座は黄色〜橙黄色である.その分生子時代の緑色分生子を持つトリコデルマ時代は,培養上でその生長が非常に遅いのが特徴である.
- 2006-03-27
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