産業廃棄物処分場建設反対運動における問題構築と環境的公正
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1990年代に入り、バブル経済等により産業廃棄物処分場が逼迫し、県レベルでの「公共関与」の処分場建設計画が推進され、各地で多くの地域紛争を生じさせた。本稿は、1994年に山梨県明野村に計画された県の処分場をめぐる住民の建設反対運動を事例としながら、10年以上にわたって建設反対の姿勢を貫き、県の建設着工を阻止し続けている住民運動においてどのような「問題構築」の言説が功を奏し、その背景は何であったのかを分析する。ここでは主として、県が旧来からの村の意思決定構造を前提に、手続きの過程が不透明なままなされた計画決定を権威主義的に住民の承諾を迫った事態に対して、一種の「環境的公正(正義)」のクレーム申し立てといえる、手続き的民主性や公開性の要求や、将来世代にわたる水源汚染リスクの回避という、「世代間環境倫理」が多くの住民の共感を呼び覚まし、村民の広範な動員を可能にしたと考えられる。リスクの社会的配分の不公正性については、手続きの問題に比べれば、自らの地域社会が公正な手続きを踏まずに選定されたという思いはあるが、環境的不公正として正面から取り上げられてはいない。さらにいえば、2004年の町村合併により明野村自体が自治権を喪失したことによって、村として反対の姿勢を貫くことができなったという事実がある。昨今の大合併が、「環境自治」の後退をもたらしているともいえる。
論文 | ランダム
- 粘性ダンパー内の間隙の利用について
- 等アングル鋼板の振動解析
- アジャンタ後期窟(大乗窟)の年代を巡って--シュピンクの新説紹介と感想
- インド美術の史的展望--仏教的古代とヒンドゥ-的中世 (インドの美術)
- ガンダ-ラ美術における大乗的徴証--弥勒像と観音像