薬物依存問題の「家族」相談援助 : ジェンダーの視点を取り入れた支援の可能性について
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概要
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日本の薬物依存問題の家族相談に訪れるファースト・クライエントは薬物依存者本人(以下、本人)の母親という続柄の人が多いことが、いくつかの家族支援プログラムや相談援助の実践から分かる。家族の中で薬物依存の問題が明らかになったときに、断薬させようとしたり、付随する諸問題の尻拭いをしたりして、さまざまな対処行動を主導するのは母親なのである。母親は罪責感や不安を抱いており、こうしたイネイブリングを続けてしまう。その背景にあるのは、成人後も子どもの問題を親の責任とみなす傾向と、加えて子育ては依然として女性のみに求められる性役割の一つであるという現実である。イネイブリングが本人による自分自身の問題への直面化を妨げていることを理解していても、内面化された役割期待や、本人が引き起こす諸問題による日々の困難な状況、夫の無理解などのために、母親はイネイブリングを容易にやめることができないと考えられる。母親の行動は決して「共依存」ということばだけで片付けられない。薬物依存の「家族」相談援助においては、こうした母親のおかれた状況に焦点を当て、ジェンダーの視点から支援を行うことが必要である。そして過剰な責任を負い、追い詰められている母親は、フェミニズムの知見にふれることによって、その重荷を下ろしイネイブリングから解放されるとともに、自身のための人生を考えるきっかけをつかむことができると考えられる。
- 2006-06-24
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