茨木市補陀洛山常称寺蔵『総持寺縁起絵巻』
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概要
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今日、西国三十三ヵ所観音順礼二十二番札所としても知られる総持寺(茨木市)に伝わる縁起絵巻は『今昔物語集』以後、多くの説話、物語に所収される藤原山蔭説話を伝える一縁起として名高い。尾崎久弥氏による全文翻刻紹介により、茨木市総持寺蔵『総持寺縁起絵巻』の存在が広く知られるようになって以降、梁瀬一雄氏によって、全体的な藤原山蔭説話の整理が試みられ、その後、星田公一氏によって、さらに、説話、縁起史料の発掘と整理が試みられた。池上洵一、金谷信之氏によっても検討が重ねられ、これらの諸先学により、藤原山蔭説話の体系的把握が可能となった。また、本絵巻を含め、藤原山蔭の一連の説話文学研究は、お伽草子『秋月物語』や『鉢かづき』を検討するうえでも極めて重要な課題である。これらの諸先学に続く研究として、各縁起の基礎的研究がまず第一の課題として挙げられよう。近年の注目すべき研究として、平安鎌倉期の総持寺と世俗権力の様相について言及した岡野浩二氏の御論が挙げられる。各時代の社会構造が文学に与える影響を考える上でも本史料は貴重なものとなろう。本稿では、「総持寺縁起」研究の端緒として、未だ広く紹介されることのなかった茨木市常称寺に所蔵される『総持寺縁起絵巻』の紹介を試みる。
- 2006-01-10
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