和歌川河口干潟におけるチュウシャクシギNumenius phaeopusの採餌行動
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概要
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干潟内の環境は多様であり、場所によって底生生物の種類や数が異なる。それに伴い、干潟を利用する鳥も場所によって採餌行動や捕る餌の種類が異なることが予測される。本研究では和歌川河口干潟に毎年飛来するチュウシャクシギNumenius phaeopusの採餌の行動、餌の種類、成功率を調べた。調査地を底質によって"カキの多い場所"、"砂地"、"浅瀬"に分け、鳥の採餌行動を"歩く"、"走る"の2種類に分類しそれぞれの行動の回数を数え、採餌したエサを"大きなカニ類"、"小さなカニ類"、"エビ類"に分類して記録した。また、鳥の餌となる生物の生息状況を調べるために、底質ごとに底生生物の定量調査を行い、生物の種類、個体数、乾燥重量を調べた。チュウシャクシギはどの底質でも"歩いて"採餌することが多かったが、"砂地"と"浅瀬"においては"走って"採餌することもあった。これは、"カキの多い場所"ではカキ殻が視界を遮るために離れた場所の餌を見つけることができないのに対し、"砂地"と"浅瀬"では離れた場所で巣穴から出ているカニ等を見つけ走って捕らえることができるためだと考えられる。"浅瀬"には比較的大きなカニ類が多かったので良い餌場であると考えられたが、多くの鳥がそこで採餌している訳ではなく、また"浅瀬"で大きなカニ類をよく食べていた訳でもなかった。2種類の採餌行動の間で捕食していた餌の種類あたりの個体数に違いはなかった。しかし、捕食の成功率は"走る"方が"歩く"よりも統計上有意に高く、これは"走る"方が時間とエネルギーのコストが高いので、利益が大きい事で成り立つ採餌方法であるためだと考えられる。
- 2006-02-28
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