腎不全ネコにおける輸液および利尿剤併用療法の効果
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
輸液(乳酸リンゲル液)および利尿剤(フロセミド)併用療法が, 腎不全ネコの腎機能および生体内物質の動態に及ぼす影響を知る目的で, 腎クリアランス試験を実施し, 水分, クレアチニン, 尿素, NaおよびKのクリアランス値, 単位時間あたりの尿中排泄量および出納について調査し, 得られた成績を無処置時の成績と比較検討した.得られた成績は, 以下の通りであった.1.腎クリアランス試験 : クレアチニン, 尿素, NaおよびKの各クリアランス値(ml血清/min/kg体重)は輸液時では, 1.51±0.39,1.71±0.88,0.81±0.56,6.19±2.33であり, また, 輸液と利尿剤との併用時では, 1.00±0.15,1.17±0.35,2.84±1.25,7.31±2.63であった.クレアチニン・クリアランス値は補液時が無処置時(0.85±0.47)および利尿剤併用時に比較して高かったが, 後者2処置間には有意差は認められなかった.また, これら物質の糸球体濾過量に対する尿細管での再吸収率(%)は, クレアチニン0に対して輸液時では尿素53.1±19.8,Na88.1±8.9,K-105.2±83.3,また, 利尿剤併用時ではそれぞれ47.6±9.6,24.1±8.1および-240.4±89.0であった.利尿剤併用時には, NaおよびKの再吸収率の低下が著明であった.2.単位時間における各物質の尿中排泄量および出納 : 単位時間における水分, クレアチニン, 尿素, NaおよびKの尿中排泄量は, 輸液時では50.4±7.4ml/hr/頭, 14.5±2.8mg/hr/頭, 253.1±164.3mg/hr/頭, 15.27±7.62mEq/hr/頭, 5.35±1.40mEq/hr/頭であった.また, 利尿剤併用時ではそれぞれ, 81.6±8.4,14.3±2.9,298.8±160.5,37.73±10.52および7.66±1.72であった.利尿剤投与により水分, NaおよびKの尿中への排泄量は補液時に比較して増加したが, クレアチニンおよび尿素の尿中排泄量には両者間での差は認められなかった.出納試験成績でも同様の傾向が認められた.
- 鹿児島大学の論文
- 1987-03-16