鹿児島県宮之城地区における田植機の更新に関する経済的研究
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概要
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宮之城地区における水稲作農家が前傾型の2条用田植機から後傾型に, さらに4条用に更新した理由は, 第1に新型機によると田植作業がしやすく能率が高いこと, 第2に旧型機の経済的陳腐化を避けられること, 第3に旧型機を継続して使用すると修繕費が年年増加することの3点にあった.しかし, 更新に際して農家は新型機の購入価格と旧型機の下取り販売価格の差額を追金として負担しなければならないので, その資金調達と導入後の稼動量・利用の経済性をめぐって, 農家間で更新のあり方に違いを生じていた.すなわち, 水稲作の規模が1.0ha以上の大規模層では更新が13戸・76%の農家でおこなわれ, 0.5ha未満の小規模層ではわずか3戸・15%と少なかった.そして, 更新は昭和50年以降大規模層から始まり, 中・小規模層に次第に波及して, 54年に24戸・38%となっていた.大規模層では賃植えの戸数, 面積とも相対的に多く, 田植機の年稼動量は1台当り190aとなり, これを太く短く使用して短期間で更新を繰り返すという方法をとり, 中古機の供給源となっていた.これに比べ, 小規模層の稼動量は58aと少なく, 細く長く使って寿命がつきた時に更新するので, 旧型機はスクラップになっていた.2条用旧型機の耐用年数は7.95年, 新型機は8.58年, 4条用は8.67年であったが, 理化学的寿命と経済的陳腐化の2要因が作用して, 小規模層では9.68年, 中規模層では8.23年, 最大規模の2.5ha未満層では6.75年となり, 稲作規模によってかなりの格差があることが明らかとなった.農業機械販売業者が旧型機を下取りするのは, 第1にその農家に新型機を代りに販売すること, 第2に下取り機を補修整備して中古機として再販することにある.下取りの時期は, 新品導入後平均5.25年であった.そして, 田植機は最初の2年間で64%と激しく減価し, 残存・下取り価格は原価の36%・57,600円となり, 利用よりも経済的陳腐化に強く影響されていることが明らかとなった.その後は定率的で緩慢に減価し, 9年目の8%・12,800円が最終値となった.中古田植機の再販価格は主として補修の費用, 性能, 利用見込み年数によって決り, 年令3年もので96,700円, 新品より40%安かった.
- 鹿児島大学の論文
- 1986-03-15