高窒素血症ネコのクリアランス試験よりみた腎機能について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ネコにおける腎臓機能を知る目的で, 高窒素血症ネコ9例および正常ネコ6例を用いて腎クリアランス試験を実施した.高窒素血症ネコの内訳は尿道閉塞ネコ2例, 糸球体および尿細管を主体とした腎疾患ネコ2例, ならびに腎盂腎炎ネコ5例であった.また, 初診時の血中尿素窒素(BUN)および血清クレアチニンの濃度はそれぞれ139.4±40.8mg/dl(平均値±SD)および5.07±1.73mg/dlであった.いずれの症例も食欲不振や嘔吐など尿毒症状が認められた.腎クリアランス試験は60分間法により実施した.得られた成績は以下の通りであった.1.正常ネコに関して : クリアランス試験時の体重, 血清クレアチニン濃度およびBUN濃度はそれぞれ3.84±0.33kg, 1.121±0.312mg/dlおよび17.23±2.60mg/dlであった.クレアチニン・クリアランス値(すなわち糸球体口過量 : GFR)は2.658±0.338ml血清/min/kg体重であった.2.症例ネコに関して : クリアランス試験時の年齢, 体重, また, 血清クレアチニン, BUN, NaおよびKの各濃度はそれぞれ, 3.78±3.93歳, 3.78±0.59kg, 4.949±1.843mg/dl, 137.2±39.8mg/dl, 143.2±11.8mEq/lおよび4.42±1.29mEq/lであった.クレアチニン, 尿素, NaおよびKの各クリアランス値(ml血清/min/kg体重)はそれぞれ, 0.850±0.465,0.658±0.598,0.400±0.549および4.083±2.969であった.また, これら物質の糸球体口過量に対する尿細管での再吸収率(%)は, クレアチニン0に対して尿素57.5±15.0,Na86.0±16.1およびK-104.8±65.4であった.3.血清クレアチニン濃度とGFRとの関係 : 症例ネコ9例と正常ネコ6例の計15例について検討した.その結果, 血清クレアチニン濃度(mg/dl)をX_1,また, この時のGFR(ml血清/min/kg体重)をY_1とすると, Y_1=3.5227-0.3073log_eX_1(γ=0.949;P<0.01)の対数回帰式が得られた.4.BUN濃度とGFRとの関係 : 症例ネコと正常ネコの計15例について検討した.その結果, BUN濃度(mg/dl)をX_2,また, この時のGFR(ml血清/min/kg体重)をY_2とすると, Y_2=3.1642-0.0106log_eX_2(γ=0.925;P<0.01)が得られた.5.治癒した3例の症例ネコでは, BUN濃度が正常値を示す以前に, 血清クレアチニン濃度は正常値に復していた.以上の成績をもとに, 高窒素血症ネコの腎機能と, とくに, 血清クレアチニンを測定する意義について考察した.
- 鹿児島大学の論文
- 1986-03-15