桜島の土壌に関する研究 : 2.西桜島地区の土壌について
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概要
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桜島の東半分を占める東桜島地区の土壌調査に引つづいてその西半分の西桜島地区の土壌調査を行って土壌断面形態並びに土壌の一般理化学的性質を明らかにした.えた成績を要約すると次の通りである.1.土壌断面形態とその分布西桜島地区の土壌は西南部に大正3年噴出の熔岩原を有する他は大部分が桜島基底熔岩上に火山噴出による抛出物が厚く堆積し, このものの風化によってできたものである.これらの抛出物の堆積様式の相違から西桜島地区に7つの土壌統を設定した.ここに各土壌統の特徴とその分布を示すと次の通りである.1)白浜統大正の浮石の角礫層と安永浮石の円礫層を挾んだ上下2つの安永浮石の角礫層とを持っている.高免台地の西半分および白浜地区に分布している.2)二俣統大正噴出の浮石の角礫層の他に安永噴出の2つの浮石の円礫層と2つの安永浮石の角礫層とを持っている.二俣地区に分布している.3)松浦統大正噴出の浮石の角礫層の他に安永噴出の浮石の円礫層と1つの同時期噴出の浮石の角礫層とを持っている.松浦および西道地区に分布している.4)高免2統大正および安永噴出の浮石の角礫層を各々1つを持っている.主として藤野地区に分布している.5)武統浮石礫層は持たないが, 表層土は大正噴出の浮石礫を多量混じている.藤野および武地区に分布している.6)赤生原統大正噴出の浮石の角礫層を1つ持っている.主として赤生原地区に分布している.7)野尻統浮石礫層を持たない.武統と異って表層土は浮石質の砂礫は含まず, スコリヤ質の砂礫を含んでいる.赤水地区に分布している.以上の断面形態を図1に, その分布を図2および3に示した.2.黒色土層の堆積時期安永噴出の浮石礫層の直下にある火山灰砂の風化黒色土層およびその下層にある浮石礫層の堆積時期はその黒色土層中に古墳時代, 弥生時代および縄文時代の土器および土器片を包含していることから, この土器包含土層およびその下層の堆積層は安永噴火の前の大噴火として記録にある文明噴火の噴出物ではなく, それより非常に古い時代, 少なくとも古墳時代の中期(今より約1500年前)およびその下層はそれよりさらに古い時代の噴出物であると推定した.従って文明噴火の際は熔岩および火山灰砂のみ噴出して浮石礫は抛出していないようである.3.土壌の理学的組成西桜島地区の土壌は大正3年の大噴火の際に地区全体が降灰石に被われているため, 新しい, 粒子の大きい降灰石の添加によって砂礫の多い砂質土となっている.礫は殆んど浮石礫で, その量は高免, 白浜, 二俣, 松浦地区のものが多く, 藤野および武地区のものが最も少なく, 赤生原地区のものはまた多くなっている.表層土の砂分の総平均量は82%で, 粘土の総平均含量は6.3%である.表層土の粘土含量は武地区のものが最も多く8.4%, 次いで多いのは藤野地区のもので7.8%を示す.この両地区は大正3年の噴火時の降灰石の量が少なかった地区である.4.化学的性質1)反応土壌の反応は西桜島地区土壌の総平均でpH(H_2O)が5.2,pH(KCl)が4.7であるが強酸性のものが多い.置換酸度Y_1の総平均は2.5である.酸性反応の強い割に置換酸度Y_1の値が小さいのはこの地区の土壌が砂分の多い砂質土であるためである.2)塩基置換容量西桜島地区の塩基置換容量は土壌の腐植と粘土含量に支配されている.地区の表層土の総平均が2.96m.e.で, 最小は白浜地区の平均2.88m.e.であり, 最大は武地区の4.94m.e.である.ことに武地区の下層土の塩基置換容量は平均6.23m.e.でその範囲は4.26〜17.8m.e.で大きい値を示している.3)置換性塩基西桜島地区の表層土の総平均石灰含量は1.44m.e., その飽和度は39.1%である.置換性苦土の総平均含量は0.31m.e., 同加里含量は0.31m.e.である.西桜島地区の土壌の塩基含量は極めて少ない.4)窒素西桜島地区の土壌の表層土の窒素の総平均含量は0.10%である.地区で最も少ないのは赤水地区の土壌で平均0.06%, 最も多いので武地区のもので平均0.12%である.いずれも少ない.5)腐植西桜島土壌の表層土の腐植の総平均含量は1.83%で極めて少ない.下層の黒色土層の腐植含量は平均3.39%であるが, 多いものは5.38%を示すものがある.しかし, 湿土の色は黒褐色を呈している割に腐植の量の少ないのは土壌が砂分にとむからである.6)炭素率西桜島地区の土壌の表層土の総平均炭素率は11.0である.7)燐酸吸収係数西桜島地区の土壌の表層土の総平均燐酸吸収係数は91である.その範囲は最低0,最高399であり, 下層土の平均は316,最低24,最高693で下層土の方が顕著に大きい.火山灰砂の風化土としては燐酸吸収力が小さいのは比較的新しい噴出物の未風化の砂分の多い砂質土であるためである.8)有効燐酸西桜島地区土壌の表層土の総平均含量は66.9mgで最低0,最高239.3mgである.下層土の総平均含量は19.7mg, 最低0,最高84.5mgであるが, 有効燐酸を含まないものが多い.
- 鹿児島大学の論文
- 1968-02-15
著者
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