2.奄美大島に生育する広葉樹材の材質特性と用途(2) : シラツグおよびムツナラビ材について
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概要
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シラツグ(Elaeocarpus japonica S.et Z.)およびムツナラビ(Ilex goshiensis Hayata)はそれぞれ近畿地方南部以西より中国, 台湾の暖帯ならびに亜熱帯にわたり, 広く分布している常緑高木である。本報告では奄美大島にある岩崎産業(株)社有林より伐採したシラツグ(樹齢49)およびムツナラビ(樹齢126)の基礎材質とこれに基づいた今後に期待される有効利用について検討した。供試木はそれぞれ地上20cmのところで伐採した長さ4mの元玉1本である。この丸太の元口から3mの部分は機械的性質を, それ以上の部分は組織的性質および物理的性質を求め, また製品の試作に利用した。本報告では主に両樹種の機械的性質(曲げ破壊係数, 曲げ弾性係数, 衝撃曲げ吸収エネルギー, 縦圧縮強さ, 板目面および柾目面のせん断強さおよび割裂抵抗)を求め, あわせて, これらの値の樹幹内の横断面半径方向の変動を検討した。結果の要約はつぎの通りである。1.シラツグの樹幹内横断面半径方向の生材含水率の変動は髄に近い部分で約64%, 樹皮に向かってやや低下し, 最も樹皮に近い部分で25%程度を示した。なお, 樹幹内の生材含水率の平均値は61%であった。一方, ムツナラビのそれは樹心部分(約89%)より樹皮側へ向かって曲線状に低下する。最も樹皮に近い部分の生材含水率は, 約26%でもった。なお, 樹幹内の生材含水率の平均値は71%であった。2.気乾比重はシラツグでは0.50〜0.65の範囲が全体の約95%, ムツナラビでは, 0.60〜0.70の範囲が全体の約78%を示した。気乾比重の全平均はそれぞれ0.54,0.68であった。3.本実験で得られた機械的性質は, シラツグと同じ程度の気乾比重を持つヤチダモ, ブナの機械的性質の約80〜90%程度の値を示し, 一方, ムツナラビのそれらはシオジ, ケヤキ, クリなどと同程度の値を示す。4.シラツグおよびムツチラビの用途はこれらの蓄積量から見て工芸品および器具類(仏壇等の部材)に最適と考えられる。
- 1990-03-26
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