3.中央集中荷重方式による木材曲げ試験体の応力分布とたわみ : はりの初等曲げ理論の精度について
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概要
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木材の曲げ試験は通常Fig.1のように, 長方形断面の単純はりに対して中央集中荷重方式で行なわれ, 弾性応力σ_x, τ_< : xy>は(1), (2)式で, スパン中央の弾性たわみδ_0は(3)式で計算される。しかし, これら初等曲げ理論にもとづくはり公式は, 弾性論的に完全に厳密な式ではないから, スパン-はりたけ比L/hがあまり大きくないはりでは必ずしも十分な精度が保証されるとは期待出来ない。Fig.1に対する境界条件を完全に満足し, しかも, いわゆるclosed formの解析解は得られていない。したがって, この論文では有限要素法を用いて十分に正確な近似解を求め, 初等曲げ理論式の精度についての吟味を行った。有限要素法による解の精度は, 要素分割のこまかさに大きく依存するから, 厳密解が求められるFig.2の片持はりについて検討し, l×h=200×20の領域を1490個の要素(寸法 : 1×1および2×2)に分割すれば, 片持はり自由端変位が厳密解に対して誤差1%以内の精度で得られることを確かめた。この分割をFig.3のl×hの部分にそのまま適用し, 支点を超えるはりの部分に対し, h×hの領域を付加し, 全体で要素数を1740とした。主としてスパン-はりたけ比L/hとの関係を検討するため, 分割方式はそのままで, 0≦x≦lの区間を一定の割合で一様に短縮し, h=20(一定);l=200,175,150,125,100,75の6種類について計算を行ない, 各点の応力S_x, S_y, t_<xy>および荷重点のたわみδ_<FEM>を求めた。計算に用いた弾性定数は, もっとも主要な構造用木材であるスギのE_L, E_T, G_LT, μ_<LT>を, それぞれE_x, E_Y, G_<xy>, μ_<xy>とした。初等はり理論によるσ_x, τ_<xy>, (σ_y=0)の公式誤差率r_x, r_y, r_<xy>を(21), (22), (23)式で定義し, その結果を付表(App.(1)〜App.(6))に示した。荷重点および支点にもっとも近い要素における誤差率の絶対値が最大となるので, それをr_<max>, r^^-_<max>とし, また荷重点(および支点)から右(左)方向へ, 応力の誤差率が10,5,1%以上になる範囲の長さをx_<.10>, x_<.05>, x_<.01>(x^^-_<.10>, x^^-_<.05>, x^^-_<.01>), スパンlに対する相対位置をξ=x/l(ξ^^-=x^^-/l)として, これらをTable2に示した。R_<max>, ξ_<.10>, ξ_<.05>, ξ_<.01>等はいずれもh/L=20〜7.5の範囲で, L/hが小さくなるに従って指数曲線的に増大する。等方体のr_xは直交異方体のそれより著しく小さく, r_yは逆に少し大きく, ξ_xは等方体で著しく小さいことが知られた。たわみに関する計算値は一括してTable1に示される。要素法によって得られる荷重点たわみδ_<FEM>は, L/hが20から7.5に減少するにともなって, (3)式によるδ_0の1.02倍から1.32倍に増大する。すなわち, 初等はり理論による全たわみδ_0は実際の荷重点たわみに対しかなり過小な値である。しかし, スパン中央の断面図心と支点断面の図心間の垂直変位差δ_M((25)式)に対しては, δ_0は逆に若干過大な評価になるが, その誤差は0.4〜4.0%の範囲にとどまる。実際の曲げ試験では, Loadingblock下面の垂直変位ではなく, 上記のδ_Mに相当する量を測定する必要がある。JISおよびASTMではL/h=14とし, (24)式でヤング率Eを計算するように規定しているが, 木材のせん断付加たわみはかなり大きいから, 上記のδ_Mに対応する測定値を用いても, (24)式によるEはその木材試験体の真のヤング率E_xに対して5〜10%過小な推定となる。曲げ試験における荷重点および支点での接触応力, 木材の異方性示数k_1,k_2の応力分布および変形に及ぼす影響等については, 今後さらに考究を要する問題であると考える。
- 1988-03-26
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