ミーゼスによるフロイト論 : 精神と行動の関係
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概要
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思想家としてのジークムント・フロイトとルートビッヒ・フォン・ミーゼスは、知的な前提を共有していて、彼らの歴史的、文化的な背景に明らかな類似性があるなどということをはるかに越えている。この類似性の4つは、とくに論述する価値がある。反唯物論、歴史的進歩に対する懐疑論、人類の第一義的特徴としての精神的目的(あるいは別表現では意識)、および方法論的な合理主義。ミーゼス、フロイトの両者とも、人間の動機を理解する際、生物としての必要性の重要性を強調する唯物論者の還元主義を拒絶する。彼らは両方とも、現代の「進歩的」運動は、人間の本性についての幻想的な楽観主義に基づいており、社会的組織はこの本性として見出される、と見ていた。理論や認識論に関するミーゼスの著作において、とくに彼は、フロイトによって書かれた著作への評価を示し、こう言っている。すなわち、フロイトの著作における無意識の精神は、明示的に理由づけられ宣言された選択という現象、つまりその現象の研究でミーゼスが「プラキシオロジー」と名づけたものの背後にある、目的誘導システムである、と。このことは、プラキシオロジーと非科学者的形態における心理学との同一性も、それらの相互補完性も、両方とも明らかにした(つまり、心理分析や、ミーゼスが「チイモロギ」と名づけた研究のように言葉で記述される心理学)。ミーゼスは、フロイトと同じ程度に、詳しく研究するための原理として人間本性を考えることを頑固に支持する一方、人間行動は相矛盾的で自己破壊的である、と認識する。人間は、合理的にその本性を反映させる潜在力を持っているのに、事実上、幻想に屈服するものであるということは、この2人の思想家に共有された前提であったが、それは、彼らの同時代人の多くには不評であった。ミーゼスは、左翼に対する社会的および経済的な万能薬と闘うことに全生涯を費やしたが、一方、フロイトは、彼のリビドー理論の文脈をはずし、それを性的ユートピア主義と論じた人々に対して反論することに成熟期を費やした。しかしながら、フロイトとミーゼスを悲観論者であるとか、保守主義者であるとか呼ぶのは誤りであろう。むしろ彼らは、両方とも、同時代の多くの人が共有していた、より現実的な仮定に基づいた人間条件を改善しようと懸命に努力したのであった。フロイトとミーゼスは、幻想とともに幻滅からの脱出を通して希望を指し示したのである。
- 2006-03-15
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