中学校の体育授業における短距離走の練習効果
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概要
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本研究の目的は,中学2年生の短距離走の授業(5時間)において,生徒主体による方法と,教師主導による方法の2つを計画,実施し50m走における10mごとの速度,ピッチおよびストライドの変化を通して疾走能力の練習効果をとらえるとともに,授業方法の違いが練習効果に与える影響を明らかにすることであった.その結果は,以下のように要約できる.(1)練習前の50m走タイムは,男女練習群I,IIおよび統制群には統計的な差はみられなかった.しかし,練習後において,男子練習群Iは8.27秒から8.12秒へ,男子練習群IIは8.33秒から8.07秒へ,女子練習群は9.23秒から9.09秒へそれぞれ有意にタイムが短縮した.しかし,女子練習群I,男女統制群では有意な変化はみられなかった.(2)練習後の10mごとの疾走速度は,男子では,練習群Iが20-30m区間と30-40m区間,練習群IIが0-10m区間を除く全ての区間,統制群が30-40m区間でそれぞれ有意に増加した.一方女子では,練習群IIが20-30m区間と30-40m区間でそれぞれ有意に増加した.しかし,練習群Iおよび統制群では,どの区間においても有意な変化はみられなかった.(3)練習後のピッチは,男子では,練習群Iが20-30m区間,練習群IIが0-10m区間,統制群が40-50m区間でそれぞれ有意に増加した.一方女子では,練習群IIが0-10m区間で有意に増加した.しかし,練習群Iおよび統制群では,どの区間においても有意な変化はみられなかった.(4)練習後のストライドは,男子では練習群Iが40-50m区間,練習群IIが10-20m区間と40-50m区間で有意に増加した.しかし,統制群では,どの区間においても有意な変化はみられなかった.一方,女子では練習群IIが20-30m区間,30-40m区間および40-50m区間でそれぞれ有意に増加した.しかし,練習群Iおよび統制群では,どの区間においても有意な変化はみられなかった.(5)練習群が短距離走の動作について記述した内容の中で具体的にからだの動かし方,姿勢,タイミングなどの内容を記述したものは,練習群Iでは男子が5名(33.3%),女子が4名(36.4%),練習群IIでは男子が8名(53.3%),女子が8名(66.7%)であった.以上のことから,5時間の短距離走の練習によって男子練習群I,男女練習群IIの疾走能力を向上させることが示唆された.その主な原因は,男子練習群Iは,全速疾走局面のピッチおよびストライドが増加したこと,男女練習群IIは,ストライドが増加したことであった.また,短距離走の動作について具体的な記述をしたものは,練習群IIの方が練習群Iよりも多く,練習群IIの方が練習群Iよりも具体的に学習のねらいを理解していたと考えられた.したがって,中学生の短距離走の授業(5時間)では,生徒主体の授業(課題解決型)よりも教師主導によって授業を展開した方が効果的であることが示唆された.
- 社団法人日本体育学会の論文
- 2006-09-10
著者
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