深層乱流に供給される内部波エネルギーの空間分布に関する数値的研究(2004年度日本海洋学会岡田賞受賞記念論文)
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概要
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海洋の中・深層における乱流混合は,熱塩大循環の強さやパターンをコントロールする重要な物理過程である。この乱流混合の基になるエネルギーは,潮汐や大気擾乱などの外力によって励起された内部波エネルギーが,内部波間の非線形相互作用を通じて,乱流スケールにまでカスケードダウンすることにより供給される。したがって,乱流混合係数のグローバル分布をパラメタライズするためには,海洋内部波場のエネルギーバランスの解明が必要不可欠である。そのために,まず,内部潮汐波および大気擾乱起源の近慣性内部波の空間分布を数値実験により研究した。その結果,主要な内部波の励起が,顕著な海底地形や中緯度ストームなどによって空間的に強く限定されていることが示された。次に,内部波平衡スペクトル中のエネルギーカスケード過程を調べる数値実験を行なった。その結果,半日周期の内部潮汐波エネルギーが,緯度約30°よりも低緯度側でのみ効率的にカスケードされることが判明した。このことは内部波の三波共鳴機構の一つである"Parametric Subharmonic Instability" (PSI)によって合理的に説明される。これらの結果から,中・深層の乱流混合係数のグローバル分布は,非一様な内部波の励起源の分布に加えて,緯度にも強く規定されることが明らかになった。
- 日本海洋学会の論文
- 2006-09-05