島根における乳幼児の実態(第4報) : 摂取蛋白分析と新評価法によるChemical Score, E/Tについての一考察
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概要
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1,蛋白摂取量は1日平均44.5gで前回都市部に比べ約20%低く,朝食10gで最も低く昼食13g,夕食13gであり都市部に見られた3食間の著しい差異のある傾向とは異っている。2.動蛋比は55で都市部をはるかに上まわり,ここでも朝食が規準を下まわり,昼,夕食は50%を越え,都市部に見られた昼食動蛋比35の低値は本調査には認められなかった。3.動蛋比の分布についてみると動蛋比0は300例中70例(23%)の多くを示し,中でも朝食は100例中31例(31%)の多くを認めた。動蛋比71%以上をとっているものが昼食に多く100例中41例(41%)もあり昼食の形態が動物性食品中心である事がうかがえる。4.食糧構成を都市部と比較し著しく差異のあるものは魚貝類及び獣肉類,乳類で中でも魚貝類は都市部45gに比し本調査は71gの多くをとり主要な蛋白給源となっており,これに反し獣肉類は都市部の約1/5の6gを摂取している。これらの2点は隠岐島の食餌の特徴を示していると考えられる。乳類については牛乳1日1本連続飲用者が都市部で55%あるに比し本調査では17%の低値を示した。又乳類50gを摂取してる者が26%あり,これはアイスクリームによるものである為夏期以外では更に乳類摂取量は減少すると考えられる。5.蛋白構成比を食品群別に見ると穀類33%,魚貝類31%でこの2種が主な蛋白給源を占め,ついで乳類11%,卵類10%の構成比を示した。6.必須アミノ酸構成をFAO値に比較すると規準量を下まわるものは含硫アミノ酸及びTryの2種で朝,昼,夕食,1日合計とも含硫アミノ酸が第1制限アミノ酸となっている。新評価法によるA/E比では規準を下まわるものが含硫アミノ酸,Try, Val, Ileu, Lysの多くがみられた事はこの評価法の特徴であるといえよう。第1制限アミノ酸はFAO値の場合と同様いずれの場合も含硫アミノ酸である。7.P.Sは86±6.7であるに反し, C.Sは74±5.2で著しく低い。8. P.S及びC.Sの分布状況をみるとP.Sにおいては71〜100の範囲にとゞまり,C.SにおいてはP・S値をはるかに下まわる61〜84までの範囲内にあり,このことからA/E比によるC・Sの新評価規準は相当きびしいものである事が判った。9. P.Sにおける第1制限アミノ酸出現状況は含硫アミノ懐が第1制限アミノ酸となるものが60%あり,残りはTryとLysで占められ,P.Sの場合には第1制限アミノ酸としては3種類のアミノ酸が出現している。10. C.Sにおける第1制限アミノ酸出現状況はいかなる場合も含硫アミノ酸であった。前回調査では動蛋比及び蛋白価が第1制限アミノ髄の種別の出現に影響がある事を明らかにしたが, C.S値においては動蛋比に関係なくいかなる場合も第1制限アミノ酸は含硫アミノ酸を示す事が判った。これはA/E比による新評価法の特徴と考える。11. E/T比は1日合計2.56で前述のP.S値と同じ傾向を示し,P.Sとの相関係数はr=0.98のきわめて高い相関関係を認めこれはE/T比がP.Sに代りうる判定規準となると考えられる。以上,従来のNg当りのアミノ酸比率のみによる検討でなく,総アミノ酸量に対する個々の必須アミノ酸比率の観点から蛋白を評価する方法を今回の調査で試みたが,その結果FAO値Patternに比しA/E比Patternはかなりきびしい規準となることがわかり,FAO Patternには見られない二,三の傾向も認めることが出来た。しかし本研究は幼児期の食餌という1種の特殊な形態(動蛋比の高い)の実例について適用したのですべての食餌にこの結果と同じ傾向が見られるとはいえない。今後一般保健食餌,特殊食餌等種々な形態の食糧構成の食餌についても,新評価法を試み,その中から食糧構成とC.S値との関係を明らかにし, P.S値とも考え合せ,より具体的で実際面にすぐ当てはめられる様な「簡易蛋白評価表」のようなものを考察したいと考えている。
- 島根県立大学短期大学部の論文
- 1967-03-01
島根県立大学短期大学部 | 論文
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