僻地の中学生における職業観形成の特質
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概要
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個人の職業選択,職業的適応の不可欠の要因として,職業観をとり上げ,僻地の中学生におけるその実態を把握して,かれらの職業観形成の要因を探求し,大都市ならびに地方都市の中学生との比較検討により,僻地生徒のそれらの特質を分析して,進路指導における職業観の意義を確認し,かつ僻地における進路指導の問題点を解明した。上述の目的のために,質問紙法,面接法および作文によって,僻地中学生505名,大都市中学生210名,地方都市中学生415名を対象として調査した。その結果,僻地生徒には就職希望者が遙かに多く,希望職業は,かれらの生活環境とは全く異ったきわめて都会的で明るい清潔な職業としてのイメージを与える若干の職業に限定され,ヴァラエティに乏しく,またかれらの大半は郷里を離れて大都市での職業生活を営むことを希望している。また,僻地生徒は,職業知識が貧弱で,職業選択の動機づけや職業情報を教師や学校で得た者は少なく,かれらは一様に経済性重視の職業観を高く評価することが特徴的であり,職業価値意識が低く,職業観が概して未成熟である。各種の希望職業に関する職業観を検討したが,対照群との間で価値のおきどころにかなりの開きがあり,僻地生徒の職業観に歪みや発達上の遅れが見出きれる。上述のことは,いずれも,僻地という生活環境の後進性に基づくものと考えられる。以上のことを従来の研究結果と併せて発達的に考察し,進路指導における職業観の意義についてふれ,さらに職業的適応,職業的満足感を目標とした職業選択のために望ましい職業観を育成することの必要性について述べ,それに基づき僻地において,進路指導充実のためにとくに必要な施策と,その究極の課題たる後進性を除去し近代化をはかるための僻地開発・振興の問題点を学校教育の立場から言及した。
- 島根県立大学短期大学部の論文
- 1966-03-01
島根県立大学短期大学部 | 論文
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