適正食費に関する研究(第2報) : 家庭食における食品選択の傾向
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
1,一般家庭(本学学生)の昭和46,47,48年7〜8月中における3日間の食事調査63世帯より,栄養摂取量,食品群別摂取量と食材料費の相関を検討した。その結果きわめて強い正の相関を示したものは動物性蛋白質,果実類であった。やゝ相関が認められたものは全蛋白質,Ca,V-A,V-B_2,その他の野菜,魚介,獣鳥肉,卵類で他は相関が認められなかった。これを第1報(農村部世帯調査-昭和44年5月-)と比較すると第1報において認められた熱量,脂肪,炭水化物には相関が認められず,第1報において認められなかった果実類に相関が認められ,異なる傾向を得た。これらは世帯業態別・立地条件等からくる食品選択の相違と調査時期の影響が考えられる。食材料費の平均は366.2円であった。これより得られた栄養量を基準量(50年目途)に比べると,熱量(98%),Ca(74%),V-A(68%),V-B_2(86%),乳類(40%)で他はすべて基準量を上まわった。第1報に比べると,動物性蛋白質,脂肪は多かったが,他はすべて低値であった。しかし,動蛋比,炭水化物カロリー比,脂肪カロリー比は第1報に比べ良い値であり,相違がみられた。2,食品群別使用価格と単価及び摂取量から食品選択の傾向を検討した。食品群別使用価格を比率でみると,熱量源として穀,芋,油脂類は約20%強,蛋白質源として魚介・卵・乳・豆類は約37%,野菜・果物・海草類は約28%,調味嗜好品・菓子類が約14%を占めた。更に食材料費と食品群別使用価格について相関をみると,きわめて強い正の相関を示したものは果実類,緑黄色野菜,その他の野菜,魚介,獣鳥肉類でやや相関を示したものは菓子,卵,乳,海草類,調味嗜好品であった。食材料費と食品群別の平均単価について相関をみるときわめて強い正の相関を示したものは緑黄色野菜で,やや相関を認めたものは穀・芋類(米は除く),その他の野菜,菓子,獣鳥肉類であった。食材料費が多くなることによって,使用価格が増加する群について単価と摂取量のいずれに比重をかけているかを検討した。単価に高いものを選ぶ傾向のあるものは緑黄色野菜,菓子類であり,摂取量が多くなる傾向のものは,果実,魚介,卵類であり,単価,摂取量ともに増加する傾向のものはその他の野菜,獣鳥肉類であった。3,3日間に使用した食品の種類の数は,調味嗜好品をのぞき一世帯当り平均約42種類であった。世帯別にみると最も少ない世帯で27種類,最も多い世帯が56種類であった。世帯別の平均使用食品数と全世帯で使用した食品種類数をみると,最も多い食品群は野菜類,次いで魚介,果実,獣鳥肉,豆,穀類で,両者はほぼ同じ傾向を示した。以上のうち使用頻度の高い食品群について摂取量と単価にどのような関係があるかを検討した。その結果,緑黄色野菜にやや負の相関が認められた。他は無に近い負の相関を示した。食品の選択はさまざまの因子によって決定される。今回は新しく食品群別の価格と単価から家庭食の食品選択の傾向を追求した。なお,今後具体的に,食品別にその栄養素,調理との関連等から検討をすすめて行きたい。終りにあたって格別の御指導をいただいた愛知教育大学教授新宮忠雄先生に厚く感謝申し上げます。
- 1975-03-28
著者
関連論文
- 米飯の食味の評定法に関する研究(III) : 作成年度と異なる年度への評定式の適用ほか
- 米飯の食味の評定法に関する研究(II) : 昭和58年島根県産米の理化学的特性による評定式の作成
- 適正食費に関する研究(第2報) : 家庭食における食品選択の傾向
- 適正食費に関する研究(第1報) : 栄養摂取量,食品群別摂取量,食材料費相互の推定
- 島根県の国民栄養調査よりみた蛋白価についての考察(続報)
- 米飯の食味の評定法に関する研究(V) : パネルの評価基準の安定度について
- 海藻に関する調査と調理法
- 米飯の食味の評定法に関する研究(IV) : 61年産米の理化学的特性及び評定式の適用性について
- 127 炊飯の食味を理論式によって評定する試み (3) : 61年理論式・理化学的諸形質とT_oとの相関のまとめ ほか
- 70 炊飯の食味を理論式によって評定する試み(II)
- 炊飯の食味を理論式で評定する試み : (3)異年度に対する評定式の適用ならびにパネルの個人差に関する検討
- 山陰沿岸生海藻のカロチンおよびビタミンC含有量
- 炊飯の食味を理論式で評定する試み : (2) 58 年島根県産米の官能検査
- 家庭食におけるナトリウム,カリウムの計算値について
- 米飯の食味の評定法に関する研究(1) : 昭和58年島根県産米の官能検査
- 老人の栄養について : 自由喫食制による養護老人ホーム出雲市和光園の場合
- 食事調査の方法に関する研究(第2報) : 観察法における目測倍率について
- 食事調査の方法に関する研究(第一報) : 簡易診断法における栄養素摂取量の側面
- 適正食費に関する研究(第3報) : 家庭食における偏差パターン類似率について
- 炊飯の各種の理化学的特性より"うまさ"を理論式で導き出す試み