島根県の国民栄養調査よりみた蛋白価についての考察(続報)
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概要
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島根県の44年度国民栄養調査22例におけるFAO patternによるP.S.は平均79で,第一制限アミノ酸は含硫アミノ酸計であった。ついで基準に達しないE.A.A.はTryであった。P.S.の95%信頼区間は76〜81でよい値をえた。又37年調査農村部におけるP.S.は平均72であったのに比し,44年調査は増加の傾向を示し,年次に有意差を認めた。その増加率は95%信頼区間において1〜13であった。業態別について見ると,第一制限アミノ酸は全業態とも含硫アミノ酸計で,P.S.はその他消費者世帯85,常用勤労者世帯83,専農世帯79,兼農世帯78,日雇労働者世相74であった。A/E比では,第一制限アミノ酸は含硫アミノ酸で, C.S.は平均70であった。ついで基準に達しないE.A.A.は, Lys, Val, Try, Leu, Ileuであった。業態別について見ると,常用勤労者,その他の消費者世帯71,兼農世碍70,専農世帯69,日雇労働者世帯67であった。E/Tは平均2.49で,業態別について見ると,専農・常用勤労者,その他の消費者世帯は2・51,兼農世帯2.45,日雇労働者世帯2.36であった。業態間の有意差検定の結果,E/Tについてはやゝ有意差が認められたが, P.S., C.S.については有志差は認められなかった。2)食品群別E.A.A.摂取量は摂取蛋白の種類の増減に伴って変化し37年調査農村部に比し,すべてのE.A.A.が穀,芋類において減少し,穀,芋類以外の食品群のすべてのE.A.A.が増加した。食品群別E.A.A.の摂取比率はLysをのぞく外は穀類が第一位をしめ,ついで魚介類,豆類が占めている。すべてのE.A.A.が穀,芋類よりの摂取比率が減少し,すべてのE.A.A.が卵,豆,乳類からの摂取比率が増加し,肉類の比率が僅かに増加し,野菜類は殆ど変らなかった。3)蛋白摂取量の平均は85.7gで,95%信頼区間で76〜95でよい値をえた。また,平均値を37年調査農村部78.7gに比し約10%増加したが,44年調査母平均には有意差は認められなかった。37年調査農村部に都市部を加えた値と44年調査を比較した場合には有意差が認められ,95%信頼区間で2〜25gの増加が認められた。業態別について見ると,専農世帯98.7g,日雇労働者世碍92.4g,その他の消費者世帯88.1g,常用勤労者世帯81.3g,兼農世帯77.5gであった。業態間には有意差は認められなかった。動蛋比は32.9%で,95%信頼区間は12%〜51%であった。44年調査平均値を37年調査農村部26.8%に比較すると8%増加したが未だ基準値40%に連せず,殊に業態別について見ると,日雇労働者世帯11.7%,その他の消費者世帯25.1%,兼農世帯28.1%と低値であった。専農,常用勤労者世帯は40・5%,37.8%で殆ど基準に達する値をえた。給源となった食品群はその殆どが魚介類で占め,卵類がこれにつぎ,乳肉類の摂取量は全く少ない。動蛋比は年次に有意差はみられず,業態間には極めて有意差をみとめた。4)蛋白摂取量とC.S.又はE/Tを,T.E.A.A.とC.S.またはE/Tをかけ合わせた摂取蛋白の量,質因子を示す数値は,その摂取蛋白量と四者の間に極めて強い相関を示す相関係数をえた。本調査は摂取蛋白の分野のみで検討を加えたが,37年調査に比しその標本平均は蛋白摂取量, P.S.,動蛋比にかなりののびを示し,よい傾向が認められたが,未だその蛋白構成を見ると,食糧構成は不十分であり,特に動物性蛋白質は基準に比べて著しく低く,年次に増加を認められない結果をえた。本調査地域は酪農や養鶏を行なっている世帯が多く見られ,これらの食品の入手はかなり便利であると考えられるのでその摂取蛋白の効率化を計る消費意識の高揚によって今後のより豊かな食生活への改善が切に期待される。終りにあたって,格別の御助言御協力をいたゞいた本学長沢助教授,松江保健所中尾,山根栄養士に厚く感謝いたします。
- 1970-03-28
著者
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