西南日本の砂浜潮間帯に生息するフジノハナガイ科およびチドリマスオ科二枚貝の底質分布ともぐる能力
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概要
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沖縄と四国を中心とする西南日本の砂浜潮間帯で, 日本産のフジノハナガイ科全4種, およびチドリマスオガイ科の5種が生息する底質の粒度組成と堆積物にもぐる速さを計測した。底質はフルイを用いて1φ間隔で分析し, 中央粒径値(Mdφ)と淘汰度(σ : inclusive graphic standard deviation ; Fork & Ward, 1957)を用いて比較した。貝が堆積物にもぐる速さは, Stanley (1970)が定義したBurrowing Rate Index (BRI)によって比較を行った。サンゴ礁によって遮蔽された海浜の多い沖縄では, サンゴ屑や大型有孔虫などの生物源粒子から構成される海浜が多い。これらの海浜では, 比較的よく淘汰された砂(0.32<Mdφ<2.5;0.37<σ<1.22)にはナミノコガイ, やや淘汰の悪い, 粗粒の砂(-0.78<Mdφ<0.45;0.73<σ<1.5)にはリュウキュウナミノコという具合にほぼ分かれて分布している。より外海に面した海浜の多い四国では, ナミノコガイとフジノハナガイがよく淘汰された中粒砂∿細粒砂の砂浜潮間帯に共存することが多い。また, これら2種が分布している高知県の興津海岸(小室の浜)と浮津海岸の, それぞれ潮間帯最下部から潮下帯最上部付近にはキュウシュウナミノコも分布している。これら3種のうちで, 最も外海に面していて砕波帯の広い, 典型的な逸散型海浜に生息しているのはフジノハナガイである。フジノハナガイが生息する底質の粒度分布は, 中央粒径値・淘汰度ともに最も幅が狭い。一方, 西南日本(温帯域)の遮蔽された潮間帯砂礫底にはクチバガイが多く, 沖縄(亜熱帯・熱帯域)でよく見かける, サンゴ礁によって遮蔽され, 砕波帯の幅の狭い反射型海浜にはイソハマグリが多い。イソハマグリと, フジノハナガイ科のリュウキュウナミノコは沖縄の多くの砂浜で共存しているが, 底質に対する分布はイソハマグリの方が幅広い傾向が認められた。以上のように, 温帯・亜熱帯でも熱帯域でも相対的によく淘汰された堆積物からなる砂浜にはフジノハナガイ科二枚貝が生息しており, 淘汰不良な粗粒の海浜にはチドリマスオ科が多い。それぞれの種の海浜堆積物にもぐる速さも, このような底質分布と関係がある。すなわち, よく淘汰された細粒∿中粒砂に分布するナミノコガイ(3.6∿33.8)とフジノハナガイ(BRI : 10.7∿32.5, 以下同様)が最も速くもぐり, おもに淘汰不良の粗粒砂に分布するイソハマグリ(1.2∿4.5)やナミノコマスオ(0.7∿2.2)などのチドリマスオ科二枚貝が最も遅い。また, フジノハナガイ科の中では, 粗粒の貝殻砂に生息するリュウキュウナミノコのもぐる速度が3.3∿10.4と, 最も遅い。
- 日本貝類学会の論文
- 2001-06-30
著者
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近藤 康生
Department Of Natural Environmental Sciences Faculty Of Science Kochi University
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近藤 康生
Department Of Natural Environmental Science Faculty Of Science Kochi University
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横川 浩冶
Kagawa Prefectural Fisheries Experimental Station
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白土 史隆
Department of Natural Environmental Sciences, Faculty of Science, Kochi University
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白土 史隆
Department Of Natural Environmental Sciences Faculty Of Science Kochi University