タマガイ科 3 亜科の形態・生態と嗅検器の構造に関する追加研究
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概要
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先回(前田, 1989)タマガイ科の3亜科, すなわちタマガイ亜科, トミガイ亜科, フクロガイ亜科について, 嗅検器の構造と形態及び生態の関連について述べたが今回は更に多数の標本を用いて調査した。タマガイ亜科では嗅検器の小葉数が, 殻高が高くなるにつれて増加して行くが, 小葉構造はほとんど変化はない。タマツメタガイ属以外のトミガイ亜科では構造が複雑化するのが特徴であるが小葉数は全ての属で50∿80台で, 殻幅が増加してもほとんど一定の値を示す事が判った。又, タマツメタガイ属は殻型がタニシ型ないし球型で, 小葉数が50台, 小葉構造は単純で, 上記の2亜科のうちでは原始的形態を持つと思われる。ツメタガイはトミガイ亜科に属する大型種であるが, 半球型の殻を持ち, 嗅検器の軸は蛇行しており, 小葉構造も複雑で砂中に潜る際, 少ない環境水を有効に使用すると思われる。一方, タマガイ亜科の最大型種, ワッカナイタマガイでは殻が球型で, 外套腔がより広いと思われ小葉数は170位で嗅検器の軸は直線的で, 長さは30mmにも及ぶ。このことは砂中に深く潜って生活するツメタガイ類と, 砂底の表面近くに生活すると思われるワッカナイタマガイの生活の場の違いと思われる。フクロガイ亜科のフクロガイは殻が扁平であるが, 小葉数は50台で, 小葉構造は複雑である。本種は完全な砂中生活をするが, 小葉構造の複雑化が砂中生活に関係している事を示す傍証となるであろう。
- 日本貝類学会の論文
- 1990-03-31