幼貝加入と年令構成からみたムラサキイガイ個体群の持続不能性の検討
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概要
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ムラサキイガイ個体群が継代的に生存し得ず, 数年以内に姿を消すことについての原因を追求した。大阪湾の北岸に面する4つのステーションのコンクリート壁上のイガイベッドから経時的にサンプルを採集し, それらのサイズ分布を得た。その結果, 個体群の消滅の過程には次の二つの場合が存在することが確認された。(1)加入してくる幼貝が成貝群の中で存在し得ず, その結果, 個体群は同時出生集団となり, 老成して一世代で終る場合。(2)加入した幼貝の多くが成貝群の中でよく育ってイガイベッドが突然の崩壊に見まわれる場合。どちらにしてもイガイベッドは継代的に存続し得ず, その原因は次のように考えられる。すなわち(1)の場合は加入幼貝の数がもともと非常に少く, もし少数のものが移入したとしても補食者によって全滅させられることが原因であり, また(2)の場合は, 成貝群の中で多くの加入者が育つが, 密度効果によって個体群全体が弱体化し, イガイベッドが崩壊に導かれるためと考えられる。
- 1980-11-30