生物間相互作用と群集構造 : 生態化学量論、間接効果、そして進化(<特集1>生物間相互作用と群集構造:生態化学量論、間接効果、そして進化)
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概要
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本論文では、「生態化学量論」「間接効果」「進化」の3つをキーワードとして、特集「生物間相互作用と群集構造:生態化学量論、間接効果、そして進化」に寄せられた4つの個別論文及び2004年12月に大阪女子大学で開催された第5回地域生態系共同研究集会「生物間相互作用への注目:遺伝子から群集、そして保全」(以下「研究集会」という)でのいくつかの講演の背景を説明し、それらを関連付けることを試みる。本特集で、松村は雑食と生態化学量論の関係についての実験研究の結果を報告し、中村・野沢は攪乱後のボトムアップのカスケード効果について野外での研究を紹介している。研究集会では、加賀田がボトムアップのカスケード効果と生態化学量論の関係について報告した。本論文では、生態化学量論の発展を概観し、「成長速度仮説」を紹介した。そして、陸上生態系でも、植物のリン(P)が不足し植食者のP摂取が不十分になる可能性を示唆した。本特集で市岡は、多くの種が絶対共生型のアリ植物であるオオバギ(Macaranga)属にも、随意共生型のアリ植物や非アリ植物も見られ、オオバギ-アリ共生系を取りまく生物群集は多様であることを報告した。本論文では、雑食着であるアリを取りまく群集の研究に安定同位体が使われた例を紹介し、オオバギ-アリ共生系の研究にも、安定同位体比や化学量比を調べることが役立つ可能性を示唆した。上記のいずれの研究にも、間接効果、特に形質を介した間接効果や相互作用の変更型の間接効果が関与している。このような間接効果の理論的研究の例として、研究集会での山内の講演と難波の講演を紹介し、形質を介した間接効果や相互作用の変更型の間接効果についての理論研究が発展することの必要性を述べた。本特集で、吉田はLotka-Volterraモデルを用いて仮想的な生物群集を進化させ、一次生産量の変動の大きさと食性の進化の関係を調べた結果を報告した。本論文では、吉田の論文を含む生態系の複雑性と安定性の関係の研究について最近の例を紹介し、モデル間の仮定の違いと類似性を吟味して普遍的に成り立つ法則を探る努力や、競争や相利関係などの横の種間関係と捕食などの縦の種間関係をともに考慮することの重要性を指摘した。
- 日本生態学会の論文
- 2005-12-25
著者
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